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ミステリー
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『読みました』報告・海外編Part.9 [無断転載禁止]©2ch.net
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『読みました』報告の形式は自由です。
ただし当然ながら犯人、トリック、プロット等々のメール欄以外でのネタバレは厳禁です。
【前スレ】
『読みました』報告・海外編
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『読みました』報告・海外編Part.2
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『読みました』報告・海外編Part.3
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『読みました』報告・海外編Part.4
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『読みました』報告・海外編Part.5
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『読みました』報告・海外編Part.5
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『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.5
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『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.6
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『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.7
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『読みました』報告・海外編(書斎厳禁)Part.8
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|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
|| ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
|| ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
|| ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
|| 与えないで下さい。 ΛΛ
|| ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて \ (゚ー゚*) キホン。
|| ゴミが溜まったら削除が一番です。 ⊂⊂ |
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「その女アレックス」ピエール・ルメートル(文藝春秋)
看護師の若い女性アレックスは深夜の街で突如拉致される。見も知らぬ男に監禁され過酷な虐待を受けた彼女は必死に生き延びようともがく。
一方、妻を殺された過去を持つ警部カミーユは上司に女性誘拐事件を押し付けられやむなく捜査を始める。何日経っても被害者の身許が判らない状況に焦る捜査班。
そんなとき、カミーユの脳裏にある直感が閃く。それは事件の意外な真実を浮かび上がらせる最初のきっかけとなるのだった!
4冠6冠だの。某政治家もブログで褒めていた。
うん、このミス1位にしては面白い。シリーズ2作目だがあまりそこを意識させず単独作として作り込んでいるのにも(この場合)好感を持つ。
ただし、表4(笑)の大逆転を繰り返すだの慟哭と驚愕だのは大袈裟。本作はスピーディーで技巧的なサプライズサスペンスではない。むしろじっくり読み込ませストーリーで魅せていくタイプだ。
そしてある意味ではクラシックパズラーの一つのパターンを踏襲し発展させ過剰にしたものとも言える。しかし本格ではないという……解りにくいでしょ(笑)。
ちなみに自分は真相を予測できず、前に戻って確かめたくなること2回3回4回。あれも伏線だったかと感心した。まあ、昨今の警察ドラマを見慣れた人は鼻で笑うかも知れないが……。
刑事たちのキャラクターも良い。心に傷を持つ主人公は好戦的なチビで好きにはなれないけど、設定自体は面白い。
二人の腹心のうち富豪刑事はありがちだがドケチ刑事は性分が戯画化と紙一重なくらい徹底していて楽しい。
このプロットとキャラクターならば次も読んでみたい。 -
「死をうたう女」ブライアン・ハーパー(東京創元社)
七歳の男の子が下校中、何者かに殺された。殺人課刑事のロバートとエレンが事件を担当することになるが、被害者と同い年の息子を持つロバートは心が落ち着かない。
妻を亡くしているロバートは捜査のさなか相棒エレンに告白するもあっさり振られてしまう。しかしそれから間もなく、若い美女アンジェラに声をかけられ恋に落ちる。
自分と息子を狙うサイコキラーの魔の手が迫っていることも知らず……。
典型的なダメなサイコもの。
500ページと長い割にストーリーはありがちで平凡、“意外な犯人”も0点。それらに目を瞑るとしても(瞑れないけど)、
刑事が主人公なのに捜査によって追い詰める過程が全然描かれず偶然頼りなのには擁護のしようがない。
ただキ印描写とエロ描写で薄っぺらくサイコの体裁を整えただけのシロモノ。粗悪な便乗品。
94年当時だってこんなもん駄作以外の何物でもなかっただろ。
他社ならともかく創元がこんなもん出しちゃいかんわ。
前作も読殺リストに入っているけどこんな出来かも知れないんじゃ迷うなあ。 -
「レッド・ダイヤモンド・チェイス」チャールズ・ベノー(早川書房)
しがない元工場労働者の若者ダグはとある老婦人の誘いに乗って半世紀前に死んだ伯父ラスの謎を探る旅に出た。
モロッコ、エジプト、シンガポール。行く先々で魅惑的な美女や妙に親切な美術館員に出会い、身の危険を感じながらもダグはラスが盗み出したというレッドダイヤモンドのありかに迫っていく。
オーソドックスな巻き込まれ型……にしては話運びが人工的かつぎこちない。当初から感じる不自然さに対する答えは一応用意されているものの、やはり長い年月を消化しきれていない。
フーダニットは単純なネタだがないよりはマシか。所詮トラミス気分を味わいたい人向け。
ただしあとがきの作者のメッセージは小粋。 -
「リバーソロー」クレイグ・ホールデン(扶桑社)
ミシガン州モーガンタウン。医師ランカスターのもとに大火傷を負った男が運び込まれた。やがて男はデトロイトの麻薬中毒者ストローだと判る。
ランカスター自身もかつてデトロイト麻薬に侵された過去を持っていた。
その直後、元患者ストームが訪ねてきて友人ケビンを助けてくれと頼む。彼女がストローの件らしきことを口走ったのを聞いてケビンの家へ行くランカスター。
しかしそこには新たな死体が……。
デビュー作。550と分厚い。スカスカでも脱線気味でもないが、読み終えてプロットを把握してから振り返ると肉付きが歪に思える。
せっかくの意外な真相もその気配や期待感が乏しいと驚けない。もっと謎の存在を臭わすべき(あくまでも曖昧にだが)。
あと元恋人のセリフを殆ど書かないのは意識的にやってるのだろうが、これは逆に書いた方が良かったと思う。
〆方もあるいは唐突あるいはご都合主義的であまり好きではなかった。ハリウッド映画に顕著なモブ大量死肯定論的な。 -
「そして医師も死す」D・M・ディヴァイン(東京創元社)
スコットランドの地方都市シルブリッジで診療所を営んでいた医師アランは2ヶ月前に不慮の死を遂げた共同経営者ヘンダーソンについて他殺ではないかとの疑いを聞かされる。
ヘンダーソンの未亡人エリザベスから夫に殺されかけたという話も聞いていたアランはゴルフ仲間のマンロー警部補と協力しつつ独自に殺人犯を捜し出そうと目論む。
ディヴァインにはずれなし。やはり面白い。
展開は地味だが丁寧で、終盤指摘される“論理の穴”はこれぞ正しく論理のアクロバット! と言いたくなる代物。
新しさはないがこのくらいの密度のものをコンスタントに読めるなら本格ファンとしてはまあまあ幸せだと思う出来。
もちろんドラマ部分も作り込まれている。イギリスものはイヤな奴がたくさん出てくるんだよねえ。イギリス人は人間を信じてないんだな。でも勝ち逃げがないからまだしも。やっぱりスッキリしたいもんね。
しかし終盤の展開だけは話の畳み方が乱暴でいただけない。持って行きたい方向は解るが、書き込みが足りない。あれでは可哀想だ。2作目の憾みかな。 -
「大油田」サミュエル・エドワーズ(角川書店)
中東の小国アブー・バクルで起きたクーデターに石油メジャーアープコ社は震撼した。
新国王スレイマンには反米の気配が紛々で、油田の国有化を宣言する可能性があったからだ。
最悪の事態を回避すべくアープコは石油業界と中東とを知り尽くした人物を送り込む。その男ターク・ケニアンは調達した美女リーを使って巧みにスレイマンに接近していく。
そして、リーもまたある目的を胸に秘めていた。
70年代アメリカはこういう男(と女)の野望を描いた大河ロマンが流行ってたんだろうね。ハロルド・ロビンズが代表選手か?
主人公は大体冷酷でイケメンで性豪。金と女を求めて過酷な任務をこなし……。
まあまあ読めるし面白いとも言えるが、ロビンズに比べるとキャラクターの立ち具合がイマイチで膨らみにかける。
一番引っかかったのはラストの中途半端な後味の悪さ。完全にイランだろう。あんなことするくらいならその前のあそこで終わらせた方がずっといいよ。
俺は女心は解らんが流石にあんなことはせんだろう。この点でもロビンズ(やフレッド・M・スチュアート)に劣る。 -
「インフォメーショニスト 上・潜入篇 下・死闘篇」テイラー・スティーヴンス(講談社)
多数の言語を操り変幻自在に姿を変え一級の格闘術もマスターしている凄腕の“情報屋”マンロー。
彼女の新しい依頼人は4年前旅行先の西アフリカで消息を絶った娘を捜す大企業の主バーバンク。
破格の報酬を提示され、望まぬ同行者を強制されながらも独自の調査により誰も辿り着けなかった真相へ肉迫するマンロー。しかし一方で何者かに執拗に命を狙われる。一体誰が!?
前々から気になっていた作品。しかし天下の講談社ともあろう大手が500半ばを分冊するなよ。あとサブタイがダセェ(笑)。誰が決めるのかねこういうの。
閑話休題。女の作家がスーパーウーマンを描いたと言えば少し前までは警戒対象だったが、チェルシー以後むしろ期待を抱かせる材料にもなっている。
ただしチェルシーとは違う。あれほどツイストを効かせてはいない。プロットの中にサプライズを仕掛けるタイプか。決して多くない登場人物の中でサスペンスを保持させる腕はなかなか。
それに設定に比して筆致は抑制的だった。むしろ一作目だからもっとマンガ的でいいのではと思ったほど。マンローの背負うものもかなりヘビーだしね。だからもし設定で避けてる人がいたら逆に読んでみれ。
終盤悪しき西洋的価値観が奇襲かけてくるのは大いに気に入らないが、後付けでバランスが保たれたので今回だけは勘弁してやる。 -
「強襲」フェリックス・フランシス(イースト・プレス)
怪我で騎手を引退し今はファイナンシャル・アドバイザーとして働いているフォクストン。ある日競馬場で観戦中に隣にいた同僚ハーブが銃撃に遭う。
ハーブのスーツから脅迫とも取れるメモを見つけたことから、フォクストンはハーブが何に巻き込まれたのを探っていく。
一方で同居中の恋人クローディアの態度が豹変し、更に旧知の騎手が轢き逃げに遭い自身に疑いがかけられるなど内外にトラブルを抱えながらフォクストンは真相を求めて突き進むが。
代替わり、出版社も変わってシリーズ新規スタートか。
あらすじにちと気になる記述があったので読んでみたが、息子も相変わらずのフランシスだった。つまり70点なのだ。
つまらないとか雑だとかいうのではない。キャラクターも扱われる犯罪のネタも悪くはない。欠点らしい欠点はない。ただただ完成したものが70点というだけなのだ。
これは意識してそうしている、フランシス家家訓なのだろう。敢えて広げない。派手にしない。深みに立ち入らない。捻り回さない。そのくらいのあっさりしたおとぎ話を好む筋に、今も昔も支えられ読まれているのだと思う。
これだけでは何なので具体的なことを書いとくと、ドラマ性が希薄だ。もっと主人公を駆けずり回らせ悩ませディスらせろと思う。
恋人とのことなんかはっきり言ってがっかり。これは現実には大ピンチだけどエンタメ的には全く面白くねーよ。この瞬間ガクンと読書意欲が減退した。この辺踏み込めない限り永遠の70だな。
あと悪役に存在感がないのもマイナスかな。わかりやすい小悪党て感じで。背景の犯罪があんなにスケールでかいのに落差が。
二作目は読まないな。すぐには。 -
「ロメオ 上・下」エリーズ・タイトル(扶桑社)
美女を誘惑し惨殺するサイコキラーが跳梁跋扈するサンフランシスコ。精神分析医のメラニーはその人物に“ロメオ”と名付け、TV番組で意見を述べていた。
そしてロメオは次の獲物にメラニーを選んだ……。
姉が無惨に殺されたことを知ったカウンセラーのサラは事件担当の刑事アレグロとワグナーへの協力を決意する。
姉と同じTV番組でロメオを弾劾するサラを観ながらロメオは彼女を自分のものにすべく凶器を刃を研ぎ澄ましていた。
精神分析医の処女作。以前他の長編読んでつまんなかったけど、これはエロそうだから読んだ。ただのエロじゃなく背徳的なエロね。
ところがエロからするとがっかりだったのは、ヒロイン貧乳なのよ。最初メラニーが貧乳の描写あったからははーんこれはサラが巨乳の前フリだなと思ったら後にサラも貧乳と判明。
おいふざけんなよ! こんな姉妹何の価値もねーじゃねーか。作者(お前)のコンプレックスを直でぶつけてくるんじゃない! でかい方がいいに決まってるわバカ。
「男は実は…」とかフェミが流した都市伝説真に受けんなよ。価値観もそこは避けて多様化してんだから。
そのせいでクライマックスの読者が待ちに待った凌辱シーンも迫力が不足気味な
んだよなぁ。せっかく揉んだり打ったり手マンしたりしてんのに。言葉責めは良かったけど。
これは是非巨乳女優使ってB級映画にしてくれ。
サイコサスペンスとしての評価もさして高くない。ロメオ自身にはあまり立ち入らず、出来合いの殺人鬼にトラウマを抱える美女が挑むという定石通りの展開。
最初に挑んだ姉の仇を妹がという折角の定石を破れる設定も、姉をすぐ退場させてしまうからちっとも生きていないし。ここは前半の主人公くらいの位置付けでも良かったと思う。エロ的にもその方が楽しめた。
フーダニットも捻りは薄く、すぐ見当つく。 -
「エレクションセット」ミッキー・スピレイン(早川書房)
戦争が終わって数年後、故郷の町へ戻ってきた一人の男。資産家一族の私生児として産まれ周囲から忌避され続けた男の帰郷は波紋を呼び血生臭い騒動へと発展していく。
長くてつまらなかった。
主人公のスペックや目的を伏せたまま進むから盛り上がらないし、感情移入も出来ない。その場その場の展開を追うばかりでそれが延々続くから苦痛で苦痛で。
スピレインてB級通俗の代名詞みたいな作家だろ? 何でこんなの書いたんだ。
ちょいちょい挿入されるエロシーンがまた短い割にどぎつくて下品。その癖メインヒロインは処女とかアホか。おまけに何故か主人公もそれを尊重して裸で添い寝するだけとかイミフ。
タイガーマンは大丈夫だよね……?
まだ3作残ってるから頼むぜ。 -
「長い酷暑」リチャード・キャッスル(ヴィレッジブックス)
不動産業界の大物スターが自宅アパートから墜死した。遺体からは殴られた痕が見つかる。
ニューヨーク市警の女刑事ニッキー・ヒートと彼女を密着取材中の敏腕記者ジェームスン・ルークが現場へ向かう。捜査始まる中で、スターが破産寸前だったことが明らかとなり、若い未亡人に疑いがかかる。
更に夫婦共に愛人が複数いたことも判明。怪しげな賭け屋や絵画泥棒も巻き込み事件は容易ならぬかに見えたが。
ドラマの主人公が書いたという設定ね。ちょうどシーズン2まで観てたからタイミングはばっちり。
しかしドラマの中で二人がセックスすると明かされていたから、一作目でそれは早いんじゃないかと不安になったが、読んで納得。ニッキーはモデルのベケットより大分開放的なようで。
何しろドラマじゃそこまで何年もかかってるようだからなぁ。あれは長すぎるよ。ついでに言えば開始時点でニッキーがルークに内心もう惚れてるのもドラマと違うね。
てロマンス関係をだらだら書いたのはミステリーとしてはそこまで質が高くないから。表4(これ使う奴嫌い)に本格とあるがそれはちゃうんちゃう?
仮説を適当に語るくらいだから。まあドラマツヅキーのキャラ萌えとして読めば良いかと。 -
「クレムリン情報」ロバート・カレン(講談社)
進歩的な書記長ポノマリョフの下ペレストロイカをスタートさせたソ連。
『ワシントン・トリビューン』のモスクワ特派員コリン・バークは情報源の一人であるソ連人ジャーナリストクズネツォフから書記長が急病で倒れたとの知らせを得た。
特ダネを掴んだ喜びに震えながらアメリカへ記事を送るバーク。しかし、その裏にはKGBの影があった。
取材の過程で新進女優マリーナと親しくなったバークは、彼女の境遇のせいもあり次第に追い詰められていく。
オーバー500だが決して冗長ではなくなかなかだった。やはり記者ものに駄作は少ない。
ソ連の街や田園の描写は流石元モスクワ支局長だけあるし、後半の脱出行も手に汗握る見せ場だった。アナログだがこういうのは結構好きだ。
そしてこれもジャーナリスト出身故か、自国側もきっちり黒く書くのがいい。「アメリカの平和」も嫌だが、わざとらしく弱く描いたりするのはもっと気持ち悪い。それがないからいい。
ただしプロットは簡単そうに見えて複雑になりそうでそうでもない。エスピオナージュと呼ぶにはギアがもう一段階は上がらないとなー。
まあでも続編読んでもいい出来。 -
「恋に落ちた探偵」バーバラ・グレゴリッチ(早川書房)
私立探偵ドラゴビッチは事務所に飛び込んできた依頼人に心を奪われた。その赤毛の美女スザンヌは殺人の容疑から救って欲しいと訴える。
野心的な新聞社の副社長が印刷機の上に転落して死に、現場から植字工として働いていたスザンヌに疑いがかかったのだ。
ドラゴビッチは彼女がまだ何かを隠していると察しながらも依頼を受けることにするのだが、スザンヌは被害者の愛人で脅迫までしていたらしいと判って窮地に立たされる。
以前も言ったけど、古典以外で女が書いたor女が主人公のものはつまらなそうという偏見があるので、本作も少し迷ったのだけれど、あらすじが良さげだったからえいやと読んだ。
うん、まあまあ。本当に平均作て感じ。それじゃ損だね。うんダメだ。作者は元植字工らしくその辺を詳しく描写しているのだがそれをどう取るかにもよるかもね。
真相はあまり意外ではないかな。キャラクターの立たせ方がイマイチなのかも。主人公が鎌をかけたりピンときたり不法侵入したりと推理しないのも影響してるな。せめて一度か二度にしてもらいたい。
クロアチア人という主人公の造形はまあ良いとしてヒロインたるスザンヌは少しく魅力不足ではないか。もうちょっとゾクッとさせて欲しいところ。
ここは女の浅知恵で逆張りしやがったんじゃないかなと邪推して筆を擱く。 -
やむおえず国内編の方に掲載した論考を転載しておきます。
心して読め!!!(w
313 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/12/06(日) 19:56:08.77 ID:p+ApBL9Tオースティン・フリーマン「証拠は眠る」を読む。
ソーンダイク博士シリーズ長編中の傑作との評ありだが、
通常はワトスン役のジャーヴィスはちらっと姿を見せるだけで、
語り手も別な人物(若手弁護士)というやや毛色が変わった作でもある。
さすがに今読んでみると、売りである薬物に関する蘊蓄がうざく感じられ、
語りのテンポも悪い。ヒ素入りローソクで毒殺ってのは斬新で面白いが、
まあ、これを読者に推理して当ててみろってのは無理筋ですな。
それに短編でさらっと書いた方が際立つトリックかと思う。
原題の「As a Thief in the Night」って? -
316 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/12/12(土) 18:58:08.55 ID:L8LYizjGハリー・カーマイケル「リモート・コントロール」を読む。
ふーん、結構書いてるのにまだ多くのミステリファンにも知られていない
作家ってのはあったもんである。
一見、単なる交通事故や自殺に見えた事件の背後には、男女関係絡みの
隠れた真相があったというお話。
英国舞台の謎解き主体なサスペンスものでありながら、
主人公の一人である新聞記者の言動が諸にハードボイルドのノリなのが
異色に感じたが、解説によるとこの線も書いてた作家とわかり、
納得、納得・・・
バディもの(相棒は保険調査員、むしろ本作は中盤から彼氏が主役級であり、
探偵役)のテーストもある気軽に読めるエンタメとは言い得ようか。 -
320 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/12/20(日) 21:44:18.02 ID:AVyYg/wRマイケル・イネス「証拠は語る」を読む。
大学内で発生した隕石による殺人事件、おなじみアプルビイ警部が
偽装殺人と見破り見事に犯人をあげるまでの顛末を著者十八番の
文学談義をたっぷりまじえて描く。
創元の作品集「アプルビイの事件簿」は面白く読んだクチだし、
大乱歩が高評価した「ある詩人への挽歌」、
邦訳時に年間ミステリランキングにベスト作品入りした「霧と雪」は
それなりに面白く読んだのだが、
(「アララテのアプルビイ」は異色作ぐらいの印象しかないが)
本作はSSも顔負け(マイコーはモノホンな大学の先生だしな)
ペダンティズム連発に辟易でしたわ(w
正直言うて、一般の日本人ミステリ読者向きなマイコー未訳作品って
もう無いんじゃね?
321 :書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/12/30(水) 20:02:08.76 ID:ZGwQXXrpオースティン・フリーマン「ポッターマック氏の失策」を読む。
ソーンダイク博士シリーズの短編「歌う白骨」等の途叙ものの嚆矢
として著名な作者の手になる同シリーズ長編途叙ミステリである。
解説によれば倒叙ものは長編では本作と未訳作品がもうひとつあるのみとか。
まあ、内容的にはDNA鑑定が当たり前だのクラッカー(wとなってしまった
現代から見れば、オークションで古代エジプトのミイラを買って来て
死体に偽装とか、もうトンデモ以外の何物でもないが、逆に今読むとこの
辺が面白いとも言い得る。
型を作成しての足跡偽装なども同様だ。
クラシックではあるが、タッチは医学者作家らしい淡々としたものであり、
妙にリアルな面さえある。
楽しい謎解き物語を期待すると外れですな。
まあ、そういう作家ではないが。 -
「英国モダニズム短編集 自分の同類を愛した男」井伊順彦編(風濤社)
フリーマン、セイヤーズ、アリンガムとミステリーも含んだアンソロジーなので。
ミステリーは計5編。この中だとアリンガム「家屋敷にご用心」が一番かな。
苦手な大おばから依頼を受けたキャンピオン。彼女が旅行から帰宅すると何者かに侵入された形跡があり更に謎の住所を記した封筒が見つかったという。当該住所を捜すキャンピオンだが見つからない。
そんな時同じ住所を捜す美少女が現れ……前例がある気がするし本格ではないが、上手いネタ。
セイヤーズ2作はセールスマンモンティのシリーズ。一発ネタと忙しいネタ。いかにもあの頃ありがちなミステリー短編。
フリーマン2作はお馴染みソーンダイクもの。粉やら蝋やらから真相を推理していく面白さは相変わらず。だが一見科学的なんだがその実妄想的でもあるのが時代の限界なのかな。
しかし「謎の訪問者」の動機にはアッとなった。引っ掛かったなこれは。
あと個人的にはフリーマンの持ち味であるロマンスが欲しかった。
続編も読む。 -
「犬はまだ吠えている」パトリック・クェンティン(原書房)
アメリカの片田舎ケンモアで娘ドーンと暮らすやもめの医者ウェストレイクは狩猟クラブの仲間たちとのキツネ狩りの最中、腕と頭とを切断された女性の死体を発見する。
隣町からきたコブ警視によって保安官代理に指名されたウェストレイクは犯人探しに協力することになるのだが、凶行は一度では終わらなかった。
次に犠牲になったのは何と住民たちから敬意を集めていた名馬だった……。
クェンティン別名義のシリーズ第一作。
ミステリーとして評価するならば、さほど難易度は高くないと言える。メインの謎は中盤までに気付くし、「そりゃないやろ」と突っ込みたく箇所が2つ(泥棒後と上島)はあった。
ただ、クェンティン描く本格はキャラクターを書き割らずドラマを背負わせるのでそれがプロットに肉付いて読み応えが生まれるし、何よりドーンが可愛い!
ロイス・ダンカン「殺意が芽生えるとき」の娘の描写と比べるとストレートだが、よい。
でも成長するにつれて男絡みで父親に反抗するようになったら嫌だなぁとか一抹の危惧を抱いていたら解説で12歳まででシリーズ終了と聞いてホッ。流石解ってらっしゃる。 -
「熱砂に聖都を探せ 上・下」ダニエル・イースターマン(二見書房)
ユダヤ系アメリカ人の考古学者ローゼンはシリアでの発掘調査中に何者かに命を狙われた。辛くも撃退したが大学の研究仲間たちが皆殺しにされたとの知らせに驚愕するローゼン。
やがてその魔手は家族にも……真実を究明する決心をしたローゼンはパレスチナ人のガイドレイラを雇い幻の遺跡を求めて砂漠へと踏み込む。
まだびっくり箱だった頃の二見文庫から。秘境冒険もの+伝奇といった感じ。考えたら伝奇って強固な宗教観を持つ欧米や中東の方が馴染むね。
しかし本作はつまらない。盛り沢山なのにつまらない。長くて苦痛だった。
イスラエルとパレスチナとの描き方もまあそれなりだし、砂漠の探険から日記体のスリラーから歴史謀略アクションぽくなる終盤までプロットはよく練られていると思う。ラストの捻りも買う。
だが肉付けが足りない。主人公たちの描写がストーリー展開に追いついてない。だから筋書きを追う退屈さに襲われる。幕切れに突飛な印象を受ける。
こういう立ち位置の作家稀有そうだから大事にしたいがそのためにはもっと精進を。 -
「ピルグリム 1〜3」テリー・ヘイズ(早川書房)
“青の騎手”という通称で知られた元凄腕スパイの男。本を執筆し警察に僅かな協力をするのみだった男をかつての上司が呼び出した。
大規模な細菌テロでアメリカ壊滅を企むテロリスト〈サラセン〉の存在が確認されたため、その正体を突き止めてもらいたいと要請されたのだ。
男は探索の過程で様々な困難を乗り越えながら〈サラセン〉に迫っていく。
本作は失敗作である。なぜなら2巻から抜群に面白くなるからだ。1巻は冗長だった。主人公の物語は良かったが、テロリストの方が動きに比して分量が長すぎると思った。
しかし2巻からグンとギアが上がる。〈サラセン〉に迫るため取り組まなければならないトルコでの殺人事件の捜査が魅せるのだ。解決するのは困るが捜査も継続しなければもっと困るという流れ。
この状況下で男が試す一か八かのチャレンジは本格ミステリ顔負けの奇抜なアイディアで感心した。日本の戦前に先例がありそうな雰囲気のもの。犯人の造型も安易と言えば安易だがやはり引っ張られてしまう。
殺人事件のためにイタリアに行ったりして、この目的達成のためそれぞれ独立したイベントをクリアしていく24的というかRPG的というかそういう面白さガール。
その他蛮行を敢えてやったり罠を張ったりしてその進行のサスペンスで読ませるのも上手い。
こういうのは脚本家の本領といったところだろうね。ただし、それ故の欠点もあるやに思う。何かと言うと、偶然が多いのだ。
あれとこれとが実は繋がっていたとか、あれもこれも同じ場所だったとか、たまたま助かったとか、ギリギリに起きたとか、読ませられながらも何度か首を傾げた。
向こうのペースに乗って一瞬一瞬を観ていく媒体とマイペースで読めて容易に後戻りできる媒体との差だね。終える前に我に帰っちゃうからね。
とまれ、第二部も読んでもいい出来だった。読む前は3巻×三部作とかふざけんなと思ってたが、許そう。 -
ナサニエル・フィルブリック「白鯨との闘い」を読む。
文学「白鯨」の元ネタとなった海難(マッコウクジラ襲撃による難破)を描いた
ノンフィクション、ゆえにエンタメ(冒険小説)的面白さや文学性を求めるのは
お門違いなのだろうが、地元(捕鯨基地として知られたナンタケット島)の
地味なノンフィクション作家の手になるせいもあるのか、航海に出るまでのページで
退屈を催してしまった。航海中の留守番妻たち用の張形(呼称が「うちの人」だった
というのは悪いがワロタ)の話とかはさらっと書かれていて面白くはあったが。 -
お門違い
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>>27
25氏のように嫌がらせに反応する人が出て
しまいにスレが罵倒合戦になって荒れるのを防ぐ防御策と思ってください
あと、ご本人はそれらのスレをチェックしてしばしば逆上して書き込んでくることもあります
存在が気になってしょうがないらしい(その分本スレが静かになることもあります)
他に何かあれば当該スレでお願いします -
「平家伝説」半村良(角川春樹事務所)
慎ましく平々凡々と生きてきた青年浜田五郎は、運転手として雇われている高村家の出戻り娘敏子と恋に落ちる。
どこか気まぐれで謎めいた敏子は五郎を振り回し、やがて彼の背中にある痣に興味を示す。それは鳥の形をしていて、五郎の行きつけの銭湯の主人によると平家の財宝の手掛かりになるというが……。
騙された……。もうさ、男女のゴタゴタを書きたいならはなからそうしろよ。伝奇ぽくしないでくれ。
いくら平家の蘊蓄傾けようが宝の隠し場所を推理しようが最後にオチをつけようが、やりたかったのはそれだというのは明らかジャマイカ。
そっち先行で伝奇は後付けだろ。萎えるわ〜。 -
誤爆失礼しました。
国内編に転載します。 -
「カードの館」スタンリイ・エリン(早川書房)
元ボクサーの用心棒は、名家の美しい未亡人から一人息子の家庭教師に雇われる。そしてが足を踏み入れた屋敷は奇妙な人間関係と言い知れぬ悪意が渦巻く場所だった。
息子を脅かす何かに怯え神経をすり減らす未亡人を怪しみながらも惹かれてゆくは秘密を探ろうとするも巨大な落とし穴にはまっていく。
何やら古めかしいだとか冗長だとか批判のある作品のようで、確かに長い割にはそれほどのストーリーではない。
ただ、駄作と切り捨てるほどでもなく、定番の巻き込まれ型冒険物語が好きな人には格好の暇潰しだろう。訳者が言うように観光小説としての趣もある。
ヒロインがあっさり裏切ると思わせておいて……というのはメタな意味でも上手いと思った。
「非情の切り札」DVD化してくれ。 -
E・D・ホック「夜はわが友」を再読。
再読に耐え得る面白さあり。
シリーズキャラものとは異なる、文学性すら感じさせる作まである。
早速だが、お待ちかね収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「黄昏の雷鳴」
ちょいカッコ良さ気なタイトル期待させるが、鬱でもない意外にあっさりしたエンド。
その点でやや期待外れな感はある。
・「夜はわが友」
これも良な邦題、それはともかく内容的には表題作になるほどの出来かというと、
いまひとつ疑問が残る。探偵役の夜型人間の作曲家ジョニー・ノクターンは面白いキャラ
ではあるが。
・「スーツケース」
解説にはホック流「シンプル・プラン」とあるが、これは言い過ぎ。
オチもそれなりに面白いものの、あれほどの残酷な展開による疾走感は無いです。
・「みんなでピクニック」
これはピクニックという米らしい日常風景の中で繰り広げられるサイコ・ミステリ。
でも、まあホックにしてはそれだけとも言い得る出来か。
・「ピクニック日和」
前収録作と同じピクニックねただが、こちらは謎解きあり。
何かサム・ホーソーンものに相通じる雰囲気の田園ミステリに仕上がっている。 -
・「虹色の転職」
不景気のおりに身に沁みる者も多いであろう作。
解説にはウェストレイクの「斧」が好きな人の推すようなことが書いてあるが、
あの壮絶なレベルまではいかんです。これはこれで面白いかもしれんけんどね。
・「待つ男」
爆破魔ウェイターというキャラの面白さと予想外のオチ(まさか凍死とは)が光る作である。
・「雪の遊園地」
タイトルに冠された冬の雪の遊園地の雰囲気が何とも良し。
オチも予想外であった(手がかりあり)
・「冬の逃避行」
完全鬱エンドなこれぞクライム・ノヴェルという作。ジム・トンプスンが書けば
何の不思議もないが、というた作。
・「夢は一人で見るもの」
これも邦題が秀逸。夢判断の予知能力、SF仕立てと見せての逆転が読ませる。
・「秘密の場所」
「ピクニック日和」と同じ展開だが、謎解き色がより濃い感あり。
・「標的はイーグル」
これもかっけータイトルだが、標的を狙うものが最後の最後で標的になってまう
という展開の面白さが光る。
・「蘇った妻」
主人公の妻に対する真情が今いちわかり難く、(最後の一行を見る限り基本線はLOVEだったのか?)、展開も見える感があるのが残念。
・「おまえだけを」
文字通り、最後にどかーん!なオチ。まあ、ちょい乱暴過ぎる話ではあるな。
・「こういうこともあるさ」
「夢は・・・」とは異なり、超能力ねたがそのまま出て来るのだが、
終盤の展開は、ハードボイルドとしか言いようがない作。「ただの娘」が
可哀そう過ぎるものの強い印象を残す作だ。 -
・「キャシーに似た女」
ニック・シリーズ開始時に書かれた作だけあって、共通する盗みねたの面白さあり。
ステンド・グラスとはなあ・・
・「人生とは?」
収録作品中最短の作だが、勧善懲悪完全スルー、後味の悪さだけは抜群。
・「初犯」
ホック流な青春小説かな。オチはいわゆる女は怖いねたですわ(w
・「谷間の鷹」
ウエスタン小説みたいな雰囲気は良なのだが、謎解きハーモニカねたは見え見えかな。
・「陰のチャンピオン」
現役のヘビー級チャンプよりも強い億万長者とか突飛なアイデアは面白い。
・「われらが母校」
いじめられっ子が、時が経てば一番出世ってのは意外にありがちながら、
ありきたりなリベンジ譚に非ず、逆をゆくダークな展開が光る。 -
「くじ」シャーリイ・ジャクスン(早川書房)
表題作が凄いらしいが目次を見れば掉尾。焦らすなあと思いつつ読み進めていくが、う〜んう〜ん。
これは苦手なタイプの奇妙な味だあ。やっぱり塩梅が大事でね。濃すぎと薄すぎがあってこれは後者。
こんなこと言うとディスってるように聞こえるかも知らんが、こういう短編群はある程度の物書きならいくらでも書いてけそうなんだよね。
駄作じゃないよ。それは言うとかんと。しかし奇妙な味として評価する気にならない。ついでに解説で指摘されている存在。こんなことするならもっと話作れよ。作り込めよ。
とりまベストは「チャールズ」。これくらいのものを基準にして欲しかったね。
で肝心の「くじ」。流石にこれは奇妙な味がした。アイディアは今は昔だがそれは仕方なかろう。
もう読まないかな。 -
「チャーリー・モルデカイ1」(KADOKAWA)
これは評価しにくいな。ミステリーとは思わんし。ストーリーには意外性もなく、プロットだけみたら弱い。キャラクターの奇妙な魅力にでも萌えてみるか?
頼れる用心棒ジョックは確かに良い。だが主人公は何がしたいのかよう分からんしヒロインも印象は強烈だが若干キモい。 -
「炎の中の絵」ジョン・コリア(早川書房)
一番好きかも知れない異色作家の短編集……だったが思ったよりお行儀良い印象。「ナツメグの味」に収録されていた数作のような一つ踏み越えた世界観はなかった。
気に入らないのは、「クリスマスに帰る」のような倒叙ものが結構あること。これは(出来不出来はともかく)単なる犯罪ものであって奇妙な味ではないでしょう。もう一つねじくれないと。
「死の天使」の幕切れなんて気の利いたことしようとして失敗している。
やり過ぎという意味では「夢判断」も同じ。これはアイディアは悪くないが重ね過ぎズラし過ぎて座りが悪い。悪い意味で都筑道夫的というか。
まず気に入ったのは「ある湖の出来事」。話としては物足りないがいい感じで踏み外してきた。「マドモアゼル・キキ」「ギャビン・オリアリー」は好きな話ではないけど、奇妙な味として賑やかしで、あってもいい。
ちょっと長めの表題作はジャンルを敢えて全面に出さない趣向が奏功したと思う。
ベストは掉尾を飾る「少女」に。驚かせるのではなくニヤニヤさせながら読ませるというタイプの佳作。こういうのがコリアの持ち味なのかも。いや、これぞ奇妙な味なのか。 -
「スキャンダルをまく女」リチャード・S・プラザー(早川書房)
知り合いの映画監督ラウルに招かれハリウッドのパーティーに参加した私立探偵スコット。
そこで撮影中の映画の主演女優ヘレンと知り合い良い雰囲気になったのも束の間、プールの中から女性の死体が見つかる。
被害者は行方不明になっていた脚本家の秘書だった。行き掛かり上事件を調査することになったスコットだが、自身も何者かに命を狙われてしまう。
これは凡作。犯人に意外性がなく、ストーリー的にも二人のヒロインを捌き切れていないなど収まりが悪い。
軽ハードボイルドだから仕方ないって? お客さんそりゃちょっとディスり過ぎってもんですぜ。ハニー・ウェストとか読んでみなよ。 -
デイヴィッド・マレル「一人だけの軍隊」を読む。
80年代の大ヒットシリーズ映画、
その第1作の原作である。
長年、気になる1冊(ちゅーか、1作だった)ではあったのだが、
この作者の他作の印象が今ひとつであったため、手にしないままであった。
これは俺ほどの読書人にしては不覚であったと言い得よう。
そのハードな展開は、映画版をはるかに凌駕、
とにかくランボーは警官を殺しまくる、さすがにこのままでは、愛すべき「ロッキー」に
演じさせるわけにはいかなかったのだろうな(w
ヴェトナム戦争の英雄、戦闘マシーン化したランボーと朝鮮戦争の英雄(勲章持ち)の
警察署長ティーズル(実は本作は彼こそ主役と言い得る存在、基本は男っぽいキャラ
なのだが、怪物ランボーを相手にしては、思わず部下を見捨てて悲鳴をあげて逃げだ
したりと妙に人間臭いのが良い)率いる警官隊とのケンタッキーの山岳、森林を舞台に
激しい追跡と攻防は一読、巻をおかせぬものあり。
追う者がいつのまにか追われる者と化す展開の恐怖感の盛り上げ方は秀逸である。
終盤には映画でもおなじみトラウトマン大尉(原作はこの階級)も登場、
彼氏がランボーに止めを刺すラスト(ただし、直接描写はなく、死に際のティーズルに
その旨を語るだけ、ゆえに映画シリーズ第2作以後のノヴェライズ版もアナザーワールドとせずに、独自に可能となったのだ)。
しかし、つくづく最初から最後まで主役はティーズルだなと、
本作においてはランボーは凄い敵役に過ぎない感あり。
意外に印象に残ったシーンは、ティーズル署長が中盤に民間人の捜索参加に疑問を
呈する理由として挿入されるやや唐突な感さえあるエピ、
老人による少女(6歳)誘拐・強姦殺人(民間人の参加による混乱で遺体発見が遅れる
結果となり、事件解決も遅れる結果となる)、庭のプラスチック製プールで遊んでいた
少女の黄色い水着に刺激されたとか・・・
原作は72年の刊行だが、当時からアメリカではこういう事件が多かったんやろうなと。 -
他は読んでいない
-
CG: いま空軍やNASAが飛ばしている乗り物の20〜50年先をいく乗り物を所有しています。
それに、惑星間複合企業体(Interplanetary Corporate Conglomerate)という側面もあります。
ありとあらゆるすべての企業が集まり、それぞれの資源を提供し合い、太陽系に巨大なインフラを築いています。
DW: その主だった企業が軍事産業企業ですね。
CG: 元はそうでしたが、他にもたくさんの企業へと広がっています。
DW: では光速を越える移動、スターゲイトのような技術 粒子線、パルスレーザー兵器、そういったものですね。
CG: そんなものすら超越していますが、ええ。
CG: ええ。そして秘密宇宙プログラム同盟は−主たる目的は地球の全住民にフルの情報開示というものをもたらすことです。
そのフルの情報開示とは、エイリアンがいるとか、それだけではありません。「この80〜90年間、我々は皆さんに嘘をついてきました。
はい。そういうことで、がんばってください。」 フルの情報開示イベントは、エドワード・スノーデン(Edward Snowden)情報のデータ・ダンプとなるでしょう。
他にいくつかのハッキング情報も聞いてはいます。そういった情報はすべて解読・照合されており、ある時点で行う大量データ・ダンプに備えて地球同盟や秘密宇宙プログラム同盟にもう渡されています。
彼らの目的は、このシンジケートが人類に対して犯してきた罪をすべて暴露すること。
単にETや非地球人がいるという事実だけではなく、私達の生き方を根本的に覆すような技術の隠蔽を回避すること。
これまで地球上の全住民を支配するために活用してきた連中の企業統治体制やバビロニアの魔法経済システム−つまり奴隷システムを崩壊させるような、その先進技術を公開することです。
CG: すべては物々交換スキルに基づいて機能するんですから。コミュニティとして、皆で知恵や能力を分かち合うんです。
そして先ほどの技術を使って、必要なものはすべての人の手に入ります。電気代を支払うために9時から5時まで働く必要はなくなります‐‐ フリー・エネルギーがあります。
食料を買う必要もなくなるんです-- レプリケーター技術があるんですから。
h http://ja.spherebein...-message-part-1.html -
クリストファー・ハイド「大洞窟」を読む。
これも早川の「新・冒険小説ハンドブック」にセレクトされた一編。
恋愛沙汰と感動的(?)な旧人ネタにやや筆を割き過ぎ気味なのと、
冒険行(ちゅーか、パニック)が始まるまでの前置きが長い感があるものの、
地震による地底内への生き埋めによる、それ=冒険行が始まってからは、
リアル黄泉の国をゆく、息詰まるような展開に魅せられるものあり。
今風な感覚で、結局、若い恋人たちとかは助かるハピ、ハピ、ハッピーなんでしょとか
思うていると、これも大きく裏切る展開。
この手の作を読み慣れた者でも、最終的なサバイバーを全て予想するのは難しいの
ではなかろうか?
作品冒頭から登場の冷静沈着な日本人地質学者原田以蔵がカッコ良すぎ、
80年代前半に西洋人(カナダ)作家により、日本人がメーンとなる冒険小説が
書かれていたとはな・・
ただし、キャラを見る限り、こんな哲学者にしてストイックな武士みたいな日本人は、
当時でも、もうおらんだろと。
地底舞台の冒険ものといえば、今でもあの懐かしいヴェルヌの「地底旅行」が思い浮かぶが、
(本作でも皮肉っぽく軽く言及あり)
冒険の契機が意図的か突発的かの違いはあれど、あのようなどこか牧歌的で楽しいムードは皆無、自然の脅威、セックス、エゴ、そして死が渦巻く世界がビビッドに描かれてゆく。
(映画が大ヒットしたP・ギャリコの作がヒントかなという死に様なキャラもあり)
地底怪獣も地底人も登場しない(この辺も作品中にユーモラスに言及される)ものの、
現代(当時)のリアルな地底舞台でこんなにサスペンスフルな作が書けるわけである。 -
ぜひ、ご参加ください。
【自治】ミステリー板強制コテハン導入議論スレ [無断転載禁止]©2ch.net
http://peace.2ch.net.../mystery/1456186746/ -
デイヴィッド・マレル「ランボー 怒りの脱出」を読む。
まあ、前作がかなり面白かったので手にした。
勿論、スタローンの映画も見てるし(エンタメとしてはランボー・シリーズ最高傑作は
ぶっ飛びな展開にベトナム戦争ネタという社会性を背景にしたこの2かと思う)
前書きとして付された著者の言葉によれば、原作小説中ではランボーは死に、
映画化作品では生き延びた、本作は後者の続編(つまりノヴェライズ)とのことである。
うーん、前記したとおり、原作小説ラストママでも行けると思うのだが・・・
おおむね映画と同じ展開だが、ランボーの生い立ち(ママはナヴァホ族、なるへそ、
弓の名手足り得るエピも語られる)や心理的な葛藤を書き込んで小説としては読ませる
ものにした結果、欲を言えば映画のハードで破天荒なテンポの良さを殺いだ感があるのは。
やや残念。美形なヴェトナム人協力者コーは米在住の息子まであるという設定、
彼女を殺すのは映画ではヴェトナム軍曹のテイ(映画では髭のガヤ程度の印象しかないが、
彼氏とランボーとの因縁めいた関係、配属に関する小市民らしい屈折した感情等も丁寧に
書き込まれる)だが、ノヴェラではソヴィエト軍ヤシンが乗るヘリの掃射。
CIAのマードックは最後にはランボーと米人捕虜抹殺まで指示する外道等々、
この辺は異なる。
弓、銃、ヘリ等に関する大藪春彦風な凝った解説も挿入されたりして、
もっとこうしたら説得力があるストーリーになるというマレルの工夫がおもろい。 -
アン・ヴァン・ディーンデレン、ディディエ・ヴォルカールト編著
「誰がネロとパトラッシュを殺すのか」を読む。
カルピスこども劇場(当時)のアニメに涙した者は、思わず手にしてしまう
であろう1冊だが、
舞台となったベルギー(具体的にはアントワープ、広くはフランドル地方)では、
なぜ不人気どころか完全無視というてもよい状態が続いているのかという
謎解きが淡々と検証されてゆく興味深さがある。
ベルギー、本邦、アメリカと「フランダースの犬」という作に対する受容の
され方が大きく異なるというのが、それぞれの国民性の違いを実感させて
面白い。 -
「窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿?」マージョリー・アリンガム(東京創元社)
アリンガムのシリーズ探偵アルバート・キャンピオンが活躍する短編集。
期待して読んだが二つを除いて失望。まるでホームズのライヴァルたちの平均作を読まされているよう。アイディア自体はともかく本格として見せようとしていないのが問題。
じゃあサスペンスフルか? 冒険小説としてどうか? と言うとこれも特にパッとしない。
ついでに言えばキャンピオンにも萌えない。
例外はまず「ボーダーライン事件」。言わずもがなの傑作。2巻から読んだ世界短編傑作集で最初に感心した作品だったっけ。ストリックと言ってもいいくらい渾然一体として正に短編の手本。
他と出来が違いすぎるので代作かと勘ぐりたくなる。
次点に表題作。↑ほどではないが、ストーリーとトリックとの配合が良い。表題の謎はやや膨らみ不足だが。
訳者あとがきを読むに「反逆者の財布」を早く復刊してほしい。 -
「三つの棺」ジョン・ディクスン・カー(早川書房)
ある夜酒場に集っていた男たちのもとへ奇怪な闖入者が現れ彼らの一人グリモー教授に謎めいた言葉を投げかけてきた。
グリモーは動揺し、身を守るためとしてなぜか仲間の一人である画家バーナビーから一枚の絵を買い取る。しかし、悲劇は起こった。
雪の中何者かが訪ねてきた夜、グリモーは自室で倒れ、射殺されてしまう。複数の目撃者によると現場は密室状態だった。
更にグリモーを脅かした謎の男もまた、通りで射殺体となって発見された。至近距離で撃たれ、銃声が響いたが、犯人の姿はなかったという。
二重の怪事件にフェル博士が挑む。
巨匠の代表作。満を持して読むも、まあ、まあ。つまらなくはないが、最高傑作というほどの感動は覚えず。トリックが雑然としててスマートじゃないし、不確定要素が大杉漣。
ただし、うち一つの密室トリックだけについて言えば見事だと思う。一歩間違えばバカミスだが……つか某バカミスと通底するものがあるね。
ちなみに本作はロマンスやらはほとんど排して謎解きに徹している。いくつかの例外を除いて、カーのロマンスは予定調和過ぎてつまらんからこれはエイダン・クインやも。
ああそうそう。密室講義ね。でも個人的には幽霊論や奇術論の方が物珍しかったりする。 -
「死体のささやき」中田耕治編(青弓社)
〈評価〉
△△○△×○××
〈感想〉
ベストはヘンリー・カットナー「住宅問題」。大小の演出がいいね。ほか既読だがフィッツジエイムズ・オブライエン「真夜中の訪問者」もおすすめ。
マイク・マーマー「テラスからの眺め」は途中に無理がある。このオチがやりたいだけで雑に話作るなと。
しかし編者の解説はひどいね。長々と自己主張した挙げ句収録作品の発表年も寸評もせずじまい。この頃は書誌情報とかは軽視されてたのか?
家に帰るまでがアンソロジーだろうが。最低限の情報は載せろよ。自説を開陳したいならそれからにしろ。丁寧に読み飛ばしてやるから。 -
デイヴィッド・リッツ「ドジャース、ブルックリンに還る」を読んだ。
相当のメジャーリーグ好きでないと、嘗て野茂が活躍したロスアンゼルス・
ドジャースが、NYブルックリンのホームチームであったことは知らぬかも
しれぬ。
共にニューヨーカーな幼馴染の男2人(成功した実業家と元プロ野球選手)が
少年時代から愛して止まぬドジャースを、ブルックリンに取り戻すという
ストーリー、この経緯だけで、ファンタジーでもあり冒険小説とも言い得ようか。
原書刊行が81年、邦訳が86年だから、正に現代では夢物語
になってしまった作だが、ホームチームへの尽きせぬ愛を描いた野球小説としては、本邦における西鉄ライオンズフランチャイズ移転による九州人の悲嘆
(ダイエー→ソフバンがすっかり地元に定着した感がある昨今では、この事も過去と化した感はあるが)とか思い浮かべ、興味深く読めた。
本邦における球界再編騒ぎを思い出すと、コミッショナーの承認等、
御都合主義で上手く行き過ぎな感は否めないものはあるし、
カストロまで登場してのキューバの強打者獲得(ごく最近国交回復したばかりやがな(w )、メジャー初の女性投手登場(これは「赤毛のサウスポー」という先例ありだが)も破天荒過ぎる展開、やはりこれは「ファンタジー」なんで
ある。かと思えば、新球場誕生、ドジャース移転(ちゅーか、帰還)で
感動のハピ、ハピ、ハッピーでエンディングかと思えば、さに非ず、
やはり強くないと、勝たないとNGというプロ野球らしいシビアな現実も
描かれる。遂に宿敵(?)ヤンクスとのWシリーズまでに持ち込み、
その結果は・・・これも外してくれる。
主人公の友人である実業家がマリファナ吸いまくりだったり、
ヒロインの一人である女性リポーターが主人公2人に文字どおりの二股
(フリーセックスが幅を効かした70年代の名残りか、騒動には
至らず、軽くスルーされる)
かけたり、主人公自体が、今風に見ればロリコン気味と思えたりと、
この辺は正に書かれた「時代」を感じさせるものがあった。 -
あ
-
「容赦なき銃火」アンソニー・ボーデイン(早川書房)
殺し屋ヘンリーはマフィアのゴッドファーザードニーを始末しようとしてしくじってしまう。
その場から逃げたヘンリーは一年後、愛妻フランシスと共にサンマルタン島で暮らし始めた。のどかな生活を謳歌していた二人だが突如終わりを告げる。ドニーが証人保護を受けてサンマルタン島へやってきたのだ。
そしてそれを知ったかつての依頼主ジミーもヘンリーとドニーを片付けるべく刺客を放ってくるのだった。
ぶっ飛んだ設定とキャラクターが巧く噛み合っていて楽しかった。
奥さんがいい。 -
「死ぬためのエチケット」シーリア・フレムリン(東京創元社)
短編集。正直な感想は、微妙。つまらなくはない。描写が下手だとも思わない。だがどれも読み終えると違和感がつきまとう。オチや〆がいかにも唐突なのだ。
意外と言えばそうなのだが、快哉を叫ぶような意外ではなく「そんなとこに行っちゃうの?」という感じ。
あまり好みではなかった。
ベストは「悪魔のような強運」に。これは最初からの流れを引き受けて真相へ導いていたので。キャラクターにも一貫性があった。
掉尾を飾る、都筑道夫をあっと言わせた「奇跡」は大いに期待したのだが、イマイチ。そうだったのかと思うのはその瞬間だけで、驚けない。そういう作りになってしまっている。
「夜明け前の時」がやや気になるが、読まないだろうな。
追伸 解説はせめて各短編の発表年くらい載せとけよ。 -
「ベルリン強攻突破」フランク&ヴォートラン(新潮社)
パリでうだつの上がらない日々を過ごしていた若きカメラマンボロは新聞で従妹のマリイカがドイツで映画女優として華々しくデビューしたと知り、たまらず会いに行く。
しかし慌ただしい再会は思わぬ災いを齎した。マリイカから送られたライカで適当に撮った写真のせいで2人はナチに狙われることになってしまったのだ。
表4(笑)のあらすじ読んでこいつクズやなと思った。読み始めてもやはりクズ。
てめえで夢追って別れた癖に有名になったと聞いたら唾付きだからなと言わんばかりに乗り込んでってやろうとするんだから。思い出してもムカムカくる。
閑話休題。前記あらすじはミスリードぽい。脱出行を描く冒険小説と捉えるとがっかりしそう。
解説にあるがこれは大戦を挟んでカメラマンの生き様を描くサーガの1巻目であり、アクションは主眼ではないし、当該写真もストーリーを牽引するほどの緊急性は持たず疾走感もない。
途中、あまりに情緒に流れるから歴史を描くはずなのにと不安になった。700近い分量は明らかに冗長。
その辺割り引いて読めばまあまあ楽しめる。マリイカに恋い焦がれているようですぐ他の女に欲情するボロや従兄を愛しく思っているがエッチは拒否るマリイカの関係性とかね。
個人的には“彼女”と10年後に運命的な再会を果たすという場面を見たいけど、残念ながら邦訳はこれきり。
↑みたいに後々の伏線というかほのめかしが随所に散りばめられているのだがなぁ。。。 -
「ハドリアヌスの長城」ロバート・ドレイパー(文藝春秋)
長い。処女作にありがち。復讐ものでもなく謎解きでもないので、こら紛い物掴まされたかなと不安になったが、後半やっとミステリーぽくなってきたから少しほっとした。
久しぶりに帰郷したら親友と初恋の女性がくっついているというありがちなアウトラインながらリーダビリティはある方だ。
しかぁし! 終盤の急展開はいただけない。そのまんまってありかよ。そこに至る伏線も大してないし。割くべきところに割かず割かなくていいところに割いている印象。
良く言えば素人の大胆さ、悪く言えば行き当たりばったり。率直に言えば最後の最後で気が変わったなオマエ。
きちんとプロットを立てた上で巧く捌ければ良作の要素になり得ることなのに残念だねえ。 -
トルーマン・カポーティ「誕生日の子どもたち」を読む。
村上春樹訳による作品集。
トルーマンの幼年・少年時代の日々を題材にした5作品と
NY舞台のトルーマンらしい病的な幻想風味溢れる「無頭の鷹」を収録。
うーん、やはり「無頭・・・」は異質なテーストと言わざるを得ない。
訳者あとがきによれば、ハルキが初めて英語で読んだ(高校のサブテクストにおける抜粋で知り、ペーパーバックも読破)トルーマン作品とのことであり、
思い入れが強いものがあったのであろうか?
出版サイドも頁稼ぎに「先生、何かお好きな作を」ということかもしれんが。
他の作品群はと言えば、
「誕生日の子どもたち」のミス・ボビット(彼女の轢死による始まる物語)に
名作「ミリアム」と少しだけ似たテーストを感じるものの、
新潮文庫収録の代表作品群と比較して、
ダイレクトに登場人物たち(主人公の少年やその周囲の人々)の孤独な様が
伝わって来る感があり、非常に読み易くはある。
トルーマン入門書としてはグッドな1冊ではないかな。 -
ピエールルメートルの悲しみのイレーヌとその女アレックスを読んだけど本屋大賞とか何冠も受賞するほどのおもしろさは感じなかった
メインででてくる登場人物たちはいいキャラクターだと思ったけどそれだけかな -
俺はルメートルはアレックス読んで切った。
>>56に同感、相次ぐ高評価と好調な売れ行きの因がわからず。 -
「暁の死線」よんだ。アイリッシュ節全開でいいなぁ。
冒頭から、二人が心を通わせるまでが、なんとも。。
陶然とする読後感はまさにアイリッシュ。
よいアイリッシュの読者ではないけど、
「幻の女」
「暁の死線」
「聖アンセルム923号室」
がベスト3.
あと、訳者の稲葉氏素晴らしい。
どこぞの、抄訳をくりかえす訳者は見習ってほしかった。
」 -
実は定評がある「幻の女」「暁の死線」、俺はイマイチ感があった。
期待大だったせいかもしれんが。
>「聖アンセルム923号室」
ホテル探偵ストライカーが活躍する「自殺室」及び「殺人室」が面白く、
(初読はジュブナイル)
姉妹編として読んだが、これも良し。
ただし、この連作にはストライカーは登場せず、ポケミスに入っているとはいえ、
内容的には非ミステリである。 -
「女郎蜘蛛」パトリック・クェンティン(東京創元社)
愛妻アイリスが母親の療養に付き添っていて一人暮らし中のピーター。ある日脚本家志望という若い女性と知り合い、日中部屋を仕事場として貸すことに決める。
しかしアイリスが帰ってきた日、彼女は二人の寝室で首を吊っていた。ピーターに傷つけられたとの手紙を遺して……。
ダルース夫妻シリーズ最終作。といってもアイリスが探偵役になるものは2、3作なので実質ピーターシリーズか?
とまれ最後だ。そして夫妻最大の試練。ピーターには浮気者と殺人者二つの汚名が着せられてしまう。当初は夫を信じていたアイリスだがやがて揺らいできて遂には……。
ただね、やはり昔の作品だしウェッブの本格味のが優勢のせいかピーターの悲哀はさほど感じられない。アイリスに見苦しく懇願したりもしないし。その辺ストーリーとして物足りない気もする。
悪女成分は十分あるけどね。
本格としてのフーダニットは中盤で気付く人もおろう。個人的には殺人はともかく浮気の疑惑はどう晴らすのかが興味の中心だったが、ちとズルいと思いつつまあ上手くやった方かな。
蛇足ながら過去読んだ複数の書評では暗い話と仄めかされていたから不安だったけど、そこは心配無用だった。船長に騙された(笑)。 -
「被告側の証人」A・E・W・メースン(論創社)
若くして成功した弁護士兼下院議員スレスクは仕事で訪れたインドで束の間の愛を交わした女性ステラの消息を知る。
今や副総督夫人となったステラだがどうやら不幸な思いをしているらしいと聞いたスレスクは意を決して彼女へ会いに行く。
それが悲劇の始まりとも知らずに――。
メースンと言えば「薔薇荘にて」で黄金時代より早く黄金時代の作品を世に出したり、
「サハラに舞う羽根」ではそのヒロイン像を巡って日本ミステリー界を二分する大論争を巻き起こしたりしたことで知られる作家である。
その久々の邦訳新刊とのことで期待して読んだのだが、何かビミョー。まず視点がおかしいと思った。あらすじと前半の三人称一視点から当然期待する方向に行かないのだ。
これが例えば視点人物名が章題ならまた受け止め方も違ってこようが。まあ当時はその辺緩かったのかも知れない。そう言えば「黄金虫」にもそういうところがあった。
次に構成がまずくはないか。こうしたいならもっと前半部に書き込まないと。実はこうでしたってそれはどうなのだろう。ミスリードの成功例なのか。そも適しているのか。疑問は尽きない。
ミステリー的にみて、真相に意外性はあるが、装飾が何とも雑だ。あれだけ達者な本格ミステリを書けるメイスンがなぜこんな中途半端なものを書いたのか。やはり疑問は尽きない。
あとメタな言い方になるけど、自分が金払って映画なり舞台なり観に行ってこういう筋書きだったら損したと感じるだろうな。敢えて観る意味のないエンタメだと。 -
5、6冊くらい
今上げてるのは少し前の分です -
あー、そうなんだ
てっきり20以上読んでいるかと思っていたw -
ウルズラ・ポツナンスキ『古城ゲーム』(創元推理文庫)
14世紀の騎士や魔女になりきるリアルライブRPGに参加したバスチアン。
しかし、パーティがまたひとり、ひとりと消えていき
出口のない地下の洞窟へ閉じ込められてしまう。
そこには大量の白骨死体が……。本当に古代の呪いなのか。
オーストリアのミステリ。なりきりRPGというのは本当にあるらしく、発端がおもしろい。
意外に伏線も巧妙に敷かれていて、読後感はさわやかである。
ホラーとしては全然、という評も見たが、やはりこれは「ミステリ」なので、
呪いを本物と信じ込んでしまった仲間たちの狂気、サスペンスが本来の見どころであろう。 -
少し前にそれをテーマにした「RPG」て映画があったね
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メアリー・W・ウォーカー『神の名のもとに』(講談社文庫)
終末思想を説くカルト教祖、サミュエル・モーディカイの指揮のもと
スクールバスごと子供たち11人と、元ベトナム兵の運転手・ウォルターが攫われる。
FBIは交渉をまったく進められず、終末へのタイムリミットが迫っていく。
ウォルターは子供たちの面倒を見ながら、銃を持った男たちにささやかな反抗を試みるが……。
20年前くらいに話題になった本。積ん読になっていたが、中盤からは一気読み。
いろんな書評がウォルターおじさんを取り上げているので、ここは
引退した警察犬のコパーと、終盤に登場するFBIの潜入特殊工作員、レインを推しておきたい。
事態の収束があっけない感じがした。もうちょっとそこ盛り上げてもいいんじゃない、的な。
同じ講談社文庫の『神の狩人』と比べてしまったからかもしれないけど。
(あっちは逆にめっちゃ引っぱる) -
T・J・マグレガー「ささやく影」
超能力の存在に否定的な方は、最後まで読めないかもしれません。
量子もつれに興味のある方は、意外と最後まで読んでしまいそうです。
どちらにしても、犯人氏名の特定の仕方については激オコぷんぷんです。 -
マシュー・グイン『解剖迷宮』(ハヤカワ文庫)
医学校の地下から大量の黒人の人骨が発見される。
19世紀、ニーモという黒人奴隷が解剖用遺体の調達係、通称「復活師」であり、
その手術の腕前から解剖学の教鞭を執るまでになった、という事実があきらかになるが
大学側は広報のジェイコブにもみ消しを命じる。
過去(ニーモ編)と現代(ジェイコブ編)のパートが交互に進んでいくが
「謎」が解明されていく構造ではないため、物語がどこへ向かっているのかよくわからない。
端的に言うとつまらなかった。400頁もないのにそのせいで時間がかかった。
19世紀の医療に関心があって買ったので、興味深くはあったけれど。
こういう中途半端な構造の理由は、作者出身の医科大学で似たような事実があったため、らしい。
つまり関係者の名前をかえ、多少のフィクションを織り交ぜて小説にしたと。
だが社会的な問いかけを優先したせいで、エンターテイメント性はずいぶん減じている印象。
ニーモ編だけに絞った方が絶対おもしろかったはずだが、それだと執筆の主旨には沿わないんだろうなあ。 -
蒲松齢「聊斎志異」平凡社ライブラリー全6巻を遂に完読した。
「それチャイナ・ホラーの古典やろ、なら別板扱いなはず」との声も
出ようが、実は全編に目を通すと、スーパーナチュラルな要素皆無な
大岡裁き風裁判ネタも相当数収録されている次第。
ゆえに、リーガル・サスペンスの古典としてこの板で取りあげるもOK、
というのは強弁に過ぎるであろうか(w
この作、俺は岩波文庫版のセレクション(上・下巻)で長年愛読していたが、
(立間祥介氏の訳、なかなかに良し)、今回、平凡社の全訳と照合すると、
原書の巻の一、二から多くセレクトされているのがわかる。
巻を増すにつれてセレクト数は減る傾向にあり、巻の十二に至ってはセレクト0
である。
立間氏の横着とか早合点する向きがあろうかとも思うが、
しかし、実物に当たってみると、ある程度のボリュームがある面白い作は
前半の巻に集中しているのがわかり、このセレクション、十分に納得がゆく
ものとなっている。
ホラーに絞り込み裁判ネタが無いのは、ちと「?」だが、
面白いエピは皆無に近い(こじつけみたいなのばかり)しな。
自分は、柴田天馬氏の角川文庫版を探した世代だが、
無念、80年代前半において既に絶版。
(後にリヴァイバル復刊された時期もあったと聞くが、それもとうに絶版)。
機会があれば、軽妙にしてリーダビリティ大と言われる天馬氏の訳文にも
触れてみたく思っている。
平凡社版は昔の学者先生たちの訳だけあって、立間訳と比較しても、
少し硬めな感があるんだわ。 -
「呪われた腕 ハーディ傑作選」を読む。
新潮文庫の新装版(新訳には非ず)だが、岩波文庫の傑作選のそれと被る
収録作があるのが残念。
出来栄えが良いものを採りたいという方針は理解できるのではあるが・・・
ハーディ短編をハンディに1作でも多く読みたいという場合には残念な事
と相成る。
・「妻ゆえに」
岩波文庫に収録された作。何とも哀切なラストが印象的。
・「幻想を追う女」
これも岩波にも収録。未見の詩人を思慕する人妻、
今後の悲惨な展開が想像されるオチが強烈な面白い展開の作である。
・「わが子ゆえに」
これはミステリ抜きなアガサ作品というた感があるさらっと読める女性ドラマ
である。
・「憂鬱な軽騎兵」
岩波にも収録。英国駐屯の若きドイツ軽騎兵と村娘の悲恋、そして悲劇。
上手い語りに読ませる一編ではある。
・「良心ゆえに」
ミルボーン氏の孤独な様がビビッドに伝わって来る良作。
・「呪われた腕」
コテコテの怪奇小説だが、それだけという感あり。
これを表題作に持って来るのは、いかがなものか?
という感あり。
・「羊飼の見た事件」
サスペンス・ミステリとして読んでよい作。
怪談話に落とし切らないのが良し。
・「アリシアの日記」
出来栄えとしては、傑作選の掉尾を飾る本作を表題作に持って
きた方が妥当だったという感がある。 -
・「アリシアの日記」
出来栄えとしては、傑作選の掉尾を飾る本作を表題作に持って
きた方が妥当だったという感がある。
自意識過剰で困った姉ちゃんの日記による一人語りだが、
これが結構面白い。いわゆるキャラが上手く立ってるというやつか。 -
ボリス・アクーニン『堕天使(アゼザル)殺人事件』(岩波書店)
19世紀モスクワ、ひとりの青年が公衆の面前で謎の自殺を遂げる。
単純な事件に思われたが、捜査線上に浮かぶ謎の美女。
「アゼザル」とつぶやく謎の殺し屋……。
若手捜査官ファンドーリンは、やがて国際的な陰謀に巻き込まれていく。
ファンドーリンの捜査ファイル、シリーズ第1巻。
19世紀ロシア文学の、もってまわった表現と長セリフを模倣した文体で描く活劇。
巻によってテーマが設定されているらしく(第1巻はスパイ小説)、
あらすじから期待したような謎めいたミステリーではなかった。
ユーモアをたっぷり込めた文体は、トルストイやドストエフスキーよりも
むしろディケンズを連想させた。
笑えるのか? うーん、ディケンズのようなもったいぶった笑いが好きなら。
でも、最後は鬱エンド。評価が難しい本だな。
嫌いじゃないけど、2巻以降はいいかも。 -
小山正「ミステリ映画の大海の中で」を読む。
2012年刊行の大部なハードカバー、原作との比較論考等を
まじえたミステリ映像化作品に関する論考集であり、
それなりに楽しめるものはあった。
しかしながら、筆者も既見という作品で、どうも評価に納得が
いかないもの多し。
例えば、R・スターク原作の映画「汚れた七人」は、俺は面白く見たクチ
なのだが、盛り上がりを欠く凡庸な作という評。
逆に、同じ悪党パーカーシリーズ「人狩り」の映画化「ペイバック」は、
原作破壊の凡庸なアクション映画かと思うのだが、
主人公も原作の雰囲気に近いと、総じて高評価。
もう少しマイナーだと、映画「黒の捜査線」(ソフト化なし)という作。
昔、テレビで見たが、SFミステリとも社会派ミステリともつかない中途半端な
ワンアイデア(黒人の体に白人の脳を移植)頼りの凡作という感だったが、
事件の真相も二転三転し、フーダニット・ドラマとして良というのが、
著者評。
テレビドラマに目を転じると、「名探偵ポワロ」の「オリエント急行の殺人事件」、
どう見ても、原作世界破壊の典型、辛気臭い失敗作かと思うのだが、
大胆なリメイクで優れたミステリと高評価されている。
うーん、この本は、暇つぶしに読むにはともかく、俺にとっては
鑑賞ガイドブックには成り得ないようだ(w -
『矢の家』A・E・W・メイスンを読了
良い意味でも悪い意味でも古典って感じの推理小説だったな
トリックも犯人も今読むとかなり分かりやすい
探偵アノーのキャラクターと雰囲気を楽しむ作品だった
後、館モノのご先祖作品的なものとして考えるなら読む価値がある作品かもしれないと思った -
「その女アレックス」ピエール・ルメートル読了。
このミステリーがすごい第1位というコピーにつられて読んでみた。以下ネタバレ含む感想。
テンポがよく新たな展開の連続でどんどん進めるが死体の描写が残酷でグロイ。吐き気を催すレベル。
警察がアレックスの足取りを全然つかめず無能に思えてくる。警察と犯人との接触がなくハラハラしない。
ラストの真実より正義を求めるというのはお国柄の違いか?しかし過去に会った女なら気づくだろ・・・というツッコミは禁止か?
個性的な捜査チームのキャラはよかった。評判に劣らぬプロットの巧妙さだったが総合的にみて残酷描写が多くてグロイので好きになれない。続編の傷カミーユもこの調子なら読むのをやめる。 -
ネタばらしの削除依頼は自分で出しておくように。
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「アレックス」、「イレーヌ」はまあまあおもしろく
読めたけど、3作目は途中で読むのやめた。
他スレでも書いたが主人公の刑事と女の出会いの
エピソードには怒りさえ覚えた。いくら小説でも
あれはありえない。 -
アレ
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『闇からの声』イーデン・フィルポッツ読了
『赤毛のレドメイン家』に次ぐフィルポッツの代表作
よく言われているとおり『闇からの声』は本格ミステリーとは言い難く
探偵リングローズがどのように犯人を追いつめるかという過程と
探偵に対して犯人はどう立ち向かうのかを描く作品である
だからといって倒叙ものではないのがこの作品の良いところでもあり悪いところでもあると思う
割と地味でスローテンポな作品だが
終盤の探偵と犯人の対決はなかなかの盛り上がりがあり、ラストのサプライズもベタではあるが小気味良い -
『猫の手』ロジャー・スカーレット読了
大きなお屋敷があって、そこの主は金持ちの変人で、一族の人間も後ろ暗いとこがあって…
という典型的な館ものミステリー
序盤は一族の人間の人となりに紙面が費やされている
なかなか面白い人物ばかりで読ませてくれるし、そろそろ飽きてきたところで殺人事件が起きるという読者に優しい構成だ
これは凄いと思えるようなトリックが仕掛けられているわけではないが、真相はなかなか意外性があり
ある事実が逆転して一気に真相が理解できるようになっているのは唸らされるものがある
ロジャー・スカーレットというと乱歩が絶賛した『エンジェル家の殺人』ばかりが有名だけど
『猫の手』はそれに次ぐデキではないかと個人的に思った -
「細工は流々」エリザベス・フェラーズ読了
トビー&ジョージシリーズの2作目作品
代表作である「猿来たりなば」のような目玉となるようなトリックは無いが
物語の面白さと次々と事態が変化していくために生じる先の読め無さで読ませてくれる
今作品でこのシリーズの楽しみはトビーとジョージのキャラによるものが割と大きいなと再確認させられた
事件の真相だけでなくジョージの思わぬ行動でも驚かせてくれる -
『天井の足跡』クレイトン・ロースン
翻訳が悪いのか作者が文章書くの下手なのか
とにかく読みにくい
それに加え、話が無駄にゴチャゴチャしていて
読み辛い点は減点対象だろう
ミステリーとしては興味を惹かれる要素満載で
魅力的なシチュエーションや設定、探偵マーリニのキャラのおかげで
読み辛いのを耐えて読み続けようという気にさせてくれている
ただし結末は良くも悪くも普通
こんなにゴチャゴチャした話で奇抜なシチュエーションなのに
普通すぎる真相だったので少々拍子抜けしてしまった
まあ、平凡な真相であるためか分かりやすく納得できるようにはなっているんだけど… -
『殺人は広告する』ドロシー・L・セイヤーズ
ピーター・ウィムジイ卿シリーズ8作目。広告会社を舞台にした殺人事件。
作者が広告会社で働いていたため、その描写は詳細でかつなかなか興味深い。
麻薬組織が絡む作品となっていて若干セイヤーズの作風に相応しくないと思うのだが
題材に似つかわしくないぐらいユーモアたっぷりの作品になっていて、むしろいつも以上に明るい作品と思えるぐらいだ。
セイヤーズらしいユーモアと前作までの探偵ピーター・ウィムジイ卿とちょっと違うトリックスターぶりがとても楽しいエンタメ作品に仕上がっている。
だが本格ミステリーとしては薄味。『毒を食らわば』〜『死体をどうぞ』までのミステリーとしての充実度を思うと物足りないと感じてしまう。
ミステリーとしては少々サプライズ感に欠けるが、読み物としてなかなか面白い作品だった。 -
『その死者の名は』エリザベス・フェラーズ
著者の推理小説デビュー作にてトビー&ジョージシリーズ1作目
地味なコージーで物語の起伏が少なく少々退屈なところのある作品
トビーとジョージのキャラの面白さやその特色となる探偵と助手の逆転、最後のドンデン返しなど見所はあるが
このシリーズの他の作品はそれを当たり前のようにやってさらにミステリーとして色んな工夫や一捻りがあるので
今作より後の作品と比べると物足りなさを感じてしまう
だからと言って全く読む価値の無い作品という事は無く
十分ミステリーとして楽しめるものであるし、このシリーズのスタンダードを知るという事でも読む意義はあるだろうと思う -
『サイロの死体』ロナルド・A・ノックス
ノックスの十戒で有名な著者の作品で
あまり知られてないシリーズ探偵ブリードンものの三作目
有名な『陸橋殺人事件』と違い今作は本格ミステリーである
オーソドックスでゆったりとしたテンポのオールドミステリーなんだが
その真相はかなり捻った内容
『陸橋殺人事件』『閘門の足跡』より捻ってかつそれまでの伏線の張り方も見事だ
真相が判明した後の犯人の末路についてもあーこうなるかーとなりこれまた捻った結末を用意してくれる
個人的に今まで読んだノックスの作品で一番の作品ではないだろうかと思った -
『緑は危険』クリスチアナ・ブランド
コックリル警部ものの二作目
第二次大戦下のイギリスの陸軍病院を舞台としている。
日本人である我々にも大戦下での陸軍病院の様相がどういったものか分かるようになっており
そういった舞台設定を物語としてもミステリーとしてもちゃんと活かしている点も良い。
トリック的なものは小粒だが、誰が犯人であってもおかしくない状況を作りつつそれでいて意外な犯人を用意するのはお見事。
また容疑者たちの人物描写もなかなか巧みで彼らにしっかり感情移入できるようになっており物語を終えた時はどこか寂しい気持ちにさせられた。 -
トマス・ハリスの羊たちの沈黙とハンニバル読み終えた
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ポニー・マクマード
『シャーロック・ホームズの事件簿 眠らぬ亡霊』
ハーパーBOOKS
シリーズ2作目。
ウイスキーに関する知識がないとちょっと解り辛い描写もあるのだろうが、なかなか面白い。
ただ、作中に「ロボット」という単語が出てくるのは如何なものか。 -
『だれがコマドリを殺したのか?』イーデン・フィルポッツ
ハリントン・ヘクスト名義作品
殺人が起きるのが全ページ中三分の二ぐらいまで進んでやっとというペースで
それまでは男女のカップルがいかに結ばれ、そこからいかに破滅していくかを描いている
タイトルが誰を殺すか予告してくれているおかげで殺人という破滅が起きるまでのドラマはなかなかスリリングだ
ミステリーとしては割と大がかりな仕掛けがある作品なのだが、探偵が真相に気づき始めるあたりでピンと来てしまい予想しやすいトリックだと思う
が、「まさか本当にそんな事が可能なのか!?」という探偵の思考とシンクロしてオイオイまさか…ってなる事請け合いだ
真相のインパクトだけなら著者の一番有名な作品『赤毛のレドメイン家』より上じゃないだろうか -
「ダラスの赤い髪」 終盤あたりでの主人公の苦痛が過ぎんのと、そのまんま"つづく"なのが消化不良だったけど面白かった
ただこんな娯楽モノの小説が1200円もすると思うと微妙 -
「青列車の秘密」アガサ・クリスティ
トリック自体はまぁそこまでは
でもこの女性の書き方はやっぱり女性作家のクリスティだよなあと思った
男性作家がこういう女性の書き方したらイヤミになってしまうんだろうけどね
ひょんなことから大金の相続人になった女性ってクイーン作品とかだと根っからの純粋な聖女に描かれるイメージ
でも人間もう少し大人なら世間擦れしてるよなと
作品ではクリスティよりクイーン派なんだがクリスティのこういう描写はなるほどと感心する -
カササギ読んだ
最高でしょ、これ? 作中作完璧 -
自分は後半もわりと好きなんだけど(作中作との対比として)
みんな前半ばっかほめるんでちょっと複雑 -
何年も積んでた多数のミステリー本に少しづつ手を付け始めた。
「絹靴下殺人事件」A.バークリー
作者のミスディレクションへの誘い方が露骨で中盤くらいで犯人判明。
にしても大部分の連続殺人の動機はないに等しく、何より終盤に探偵が仕掛ける罠は
現実には絶対やりえないと断言してしまう。 という事であまり楽しめず
「猿の肖像」A.フリーマン
こちらも中盤以降おおよそ真相が想像ついてしまい、検死訊問の箇所とか
読み飛ばしてもあまり差し支えない感じになり、何だか肩透かしな気分で終了
何つーか、変にミステリー慣れ?してこういう古典作品が最後まで楽しめなくなるのは
悲しいもんだね… -
トマス・ハリス『カリ・モーラ』
途中でAmazonの評価を読んでしまい、確かに序盤はわりと退屈なので放置してたが休みの日に一気に読んだ。
コロンビア革命軍で検索すると美人の女性兵士の写真が出てくる。すべて映像化されたハンニバルシリーズとの比較でイマジネーションが働かないのは不利だと思い、コロンビアとマイアミの位置関係とかも参考にした。
味方に最初の犠牲が出たあたりからかなり面白くなる。
後半は今後シリーズ化されるなら再登場しそうな人物が複数出てくる。
悪役の背後には黒幕みたいなのもいるが中盤にチラッと出てきて主人公は対面せず終わる。どう考えても続きがあり、構想があった上で書かれていると思う。 -
『象牙の塔の殺人』アイザック・アシモフ
SF作家として有名なアシモフのミステリー作品。
大学の化学実験室で起きた殺人事件を被害者である生徒の指導教官が探偵役となり事件を追うというのが簡単なあらすじ。
SF作家だし化学実験室が現場だという事でサイエンス的なトリックを解き明かす作品なのかと思えばそんな事は無く
人間ドラマとフーダニットがメインの本格ミステリーである。
仕事と家族それに加えて事件の事まで悩みを抱えた主人公ブレイドの物語が地味ではあるが面白い。
それでいてちゃんとラストには意外性のある真相を用意してくれるんだからミステリーとして必要なもんをちゃんと揃えているんだよな。
あまり有名では無いし地味ではあるが良い作品だった、掘り出し物を見つけた気分。 -
『ナイン・テイラーズ』ドロシー・L・セイヤーズ
ピーター・ウィムジイ卿シリーズ9作目。村に不釣り合いなほど大きな教会の立つ小村を舞台とした作品。
鳴鐘術の説明(解説を読んでも訳が分からないよ)と村民による田舎訛りのせいで読みにくいったらありゃしない。
セイヤーズ作品の中でも屈指の読みづらさだと思う。
ただその読みづらさを耐えるに値する作品である事は確かで
村に現れた謎の男、消えた宝石、顔の無い死体、暗号などミステリーとして興味を惹かれる要素満載。
そして何より意外すぎる犯人に驚かされる。
ただこの真相は人を選びそうな気がする。
自分としてはセイヤーズで一番の名作という声が大きいのも頷ける作品だった。 -
55 デラーギ
あらすじと最初だけ面白そうで、後はつまらん
魅力的な登場人物皆無
掴みだけ一流 後三流 -
『オシリスの眼』R・オースティン・フリーマン
ソーンダイク博士シリーズ長編二作目。
タイトルから分かる通りエジプト考古学に関わる事件を書いている。
じっくりと物語が展開していくのが実に古き良き英国ミステリーといった感じで心地良い。
まだ馬車で移動する時代の英国の雰囲気と、これまたベッタベタな語り役と事件で知り合った女性のロマンスも堪能できる作品だ。
しかしミステリーとしても古典的な物が用意されているのだろうと予想していたら、驚きの真相が待っていた。
ソーンダイク博士の推理も1911年の作品と思えんぐらいロジカルだ。(ちょっと怪しいところがあるのはご愛敬)
1911年に良くこれだけのミステリーを書けたなと感心したが、ただトリックはこの時代だから許されるものだろうな…。
ヴァン・ダインや江戸川乱歩がベストに選ぶだけの事はある作品であったと思う。
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