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創作発表
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「葬送のフリーレン」で二次創作
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立ててみた - コメントを投稿する
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ちなみに自分の推しはリーニエです
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それではスレ立てた自分が今夜からコテつけて、シュタルクならぬ「ワイ」がリーニエに一目ぼれする設定の小説を投稿しようと思います
タイトルは「奥様は美少女まぞく」、本日22時〜24時ごろに開始予定
元ネタは「葬送のフリーレン」アウラ編。アニメ第7〜10話、コミックス2巻第14話〜3巻第23話あたりの範囲
なおR18レベルの濃厚描写は無いが一部、性的表現も含みます -
なお拙作では、あくまでもリーニエがヒロイン
フリーレンの逮捕とか刺客ドラートの返り討ちとかフリーレンの脱獄とかグラナト伯爵がリュグナーに捕まったりなどの前段は、全部カット
その辺りを脳内補完できる「葬送のフリーレン」履修済みの読者・視聴者のみが対象となる、二次創作です
すなわちフェルンとシュタルク改めワイが、グラナト伯爵の屋敷に忍びこむ場面からスタートします。よろしく -
↑コテは、これにしました。
できれば毎日投稿して、切りのいいパートごとにせいぜい連載8回以内くらいで済ませたいが、予定は未定…
ネット環境やオフラインの都合が悪ければ、小間切れの五月雨で投稿となる可能性もあります。よろしくです -
では予告通り、今から投稿開始します。初回は20レスです
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「奥様は美少女まぞく」
1
ドアを開ける音がした
ワイがふりむくと敵手・魔族のリュグナーが部下の女子を率い、町の領主グラナト伯爵を拘束・監禁している部屋に戻ってきていた
そのときのワイは、相棒のフェルンと言う乳のでかさだけが取り柄のめんどくさい魔法使い女の指図により、伯爵救出作戦の最中だった
当初は魔族抹殺のため伯爵の屋敷に忍びこんだワイとフェルンやが、夜更けとはいえ重要な講和会談の最中にしては、屋敷内が妙に静かすぎる
すでに伯爵は魔族の姦計で、囚われていたんや -
2
おそらく和睦交渉決裂の結果であろう。フリーレンの言う通り、魔族の目的は伯爵を欺くことだったんや。想定以上に性急な動きやが…
ともあれ、こちらの計画も急遽変更。伯爵救出&脱出が最優先となった次第
まずはワイが「単身」で、室内に潜入。椅子に縛られて監禁状態だった伯爵に接触。救出を図るも、ワイでは魔族相手に役不足とみた伯爵は、ワイだけ逃げろとにべもなかった
それをなんとか説得して、脱出に利用できる通行手形の紋章を受け取るまでは良かったが―――早くも魔族どもに、嗅ぎつかれたというワケや
リュグナー配下の少女は伯爵のそばに居るワイを見ても眉ひとつ動かさず、ゴミを見るように冷淡に、しかしめちゃめちゃ愛らしい声で報告した
「リュグナー様。ネズミ…」 -
3
誰がネズミやねん! ここ、お前らの屋敷ちゃうで。家主を拘禁して不法占拠している魔族め、何を言うてけつかるねん?
と、危険を忘れて突っ込もうとしたのもつかの間。ワイはその声が、場違いすぎるほど可憐であることを男の本能ですばやく察知。声の主を見つめていた
それが一途な愛に生きるエロス戦士のワイと、ゴスロリふんわりピンク髪ツインテールの美少女魔族リーニエちゃんの、初対面だった
(もちろんこの時点では彼女の名を知らなかったが便宜上、以下の文の説明箇所ではリーニエちゃん呼びするのでよろしゅうに) -
4
侵入者を見ても無表情、生気に欠けたハイライトの無い瞳、小ぶりながら頭に生えた二本の角…間違いなく、彼女は魔族だった
だが…なんという愛くるしさだろう。ああ、おなじゴミを見る目でも、気性難なクソまじめ女のフェルンとは一味も百味もちがう
あんなキュートなお目目で軽蔑視線を送られても、凹むはずもない。むしろご褒美。ワイの性癖を、心地よく刺激してくれるぅッ! -
5
そう。月の薄明かりに照らし出された彼女の美貌に、不覚にもワイは時も場合も忘れて、ときめいていたのや
(こ、この娘は…? 連れの薄情なクソばばあエルフがポカして衛兵に連行された時に居合わせていた、使節団員の魔族っ娘か!)
(あの時は遠目やったし、騒動中のこととて注目する余裕もなかったが…ゴスロリファッションが、よう似合っとる。なんという可憐な美少女や)
これはまさしく一目ぼれ、運命の出会い。(*´Д`)ハァハァ。もう、何が何でもモノにせなあかん(使命感) -
6
ワイは君に、ネズミとよばれて本望やっ。ワイを君のペットマウスにしてくれ、君のその、程よくふくらむ柔らかそうな胸の谷間にワイを挟んで、愛でてくれえぇ!
あ、もちろんワイのジュニアは「ちっさ」と、言われたこともあるものの。マウスやないで。元気な時には育ち盛りの、バラブキヌゲネズミくらいあるはずや
ワイのどす黒い性癖にどストライクで刺さるリーニエちゃん。最強の戦士・愛染ならぬアイゼン師匠の一番弟子ワイの目に留まったのが、思えば彼女の運の尽きだった -
7
いっぽう羨ましくも可愛いリーニエちゃんの横にいやがる、キザな貴族みたいな見た目のキザな上司格魔族リュグナーが、グラナト伯に尋ねる
「お知り合いで?」
首を振るグラナト伯。「いいや。昼間の冒険者の一人だ。連れの魔法使いが脱獄したとも知らず直談判にきたのだろう」
どうやら伯爵、ワイを逃がす算段らしい。果たしてリュグナー、つまらなそうに応じる
「帰っていいぞ小僧。見逃してやる」 -
8
本来のワイなら、大喜びで「ほな、さいなら」となっただろう。とはいえ今回は、フェルンとの打ち合わせもある
それに何より、今のワイには極秘のでっかい目標が爆誕している
今回の状況を徹底的に私利私欲のために利用して、このかわい子ちゃん魔族をうまく手に入れなアカン!
となれば、ワイの選択肢はただひとつ。ほんらい危ないことは嫌いだが、ひとまず作戦続行や!
恋のためなら、斧をも鳴らす――― -
9
グラナト伯を背にかばい、ワイは戦斧をかまえる
「どうした? そこを退け。邪魔をするなら殺すぞ」と、リュグナー
「やってみろよ」と言いざま、跳躍してリュグナーの背後をとる。振り向くリュグナーに向けて振り上げたワイの斧が、一閃する
間違いなく手ごたえがあり、わが恋路の邪魔者の右肩から鮮血がほとばしる -
10
だが、気づいてみればワイはキザ魔族の血が硬化して変異した巨大な手に捕まり、仰向けで床面に張り付けられていた
とっさに腕をかざして心臓を庇っていなければ、クマのそれより大きな赤黒い爪に胸を貫通されて即死だっただろう。代わりにワイの両腕は、血まみれになったが
「急所を避けたか。反応も中々だ。とはいえ人も魔族も若い奴は短慮だな、無謀で無策だ」
リュグナーはワイの行動を冷評しつつも、声に驚きの響きが漏れていた。「だが、単身で私に挑んだその武勇は評価しよう」
「単身…?」
思わずワイはほくそ笑む。まずは計画通りや! -
11
「フェルン。言われた通り隙を作ったぜ」
「なんだと?」
リュグナーが怪訝な顔をしたことで、ワイは勝利を確信した
そう、これがワイらの作戦。ワイがリュグナーたちの気を引いている間に、魔力を消しつつ屋外の最適ポジションを確保したフェルンが一般攻撃魔法で、リュグナーを撃つ段取りや -
12
ところがそのとき。愛しのリーニエちゃんが気怠げなポーカーフェイスを崩し、先ほどまでのアンニュイなヴォイスとは打って変わった張り詰め声で叫んだのだ
「リュグナー様!! 魔法使いの反応が…」
刹那、光の塊がガラス戸を突き破り、さらにリュグナーの左腕と左腹部を吹き飛ばしていた
フェルン、グッジョブ。彼女の真剣魔法勝負はこれが初見になるが、期待以上の威力やで。さすが、おっぱいが大きいだけのことはある -
13
だがリュグナーの野郎ときたら壁にもたれてはいるものの気を失うでもなく、表情に苦痛の色すら見せない。どうやら致命傷はおわせ損ねたようだ
前言撤回、やっぱ口うるさい嫌み女は使えんわ
見ればリュグナー、徐々にだが欠損部分を再生させつつある。おいおいフェルンなにやっとんや、はよトドメ刺さんかい! -
14
然るにそこで我が愛しのリーニエちゃんが、ガラス戸の破れから屋内に入ってきたフェルンの前に立ちはだかる
「リュグナー様、ここは私が」
くそっ、いくら上司とはいえリュグナーは役得すぎやで
「様」付けで呼んでもらえて、あげく手前がポカしたくせに可愛いリーニエちゃんに守ってもらえるなんて! うらやまけしからん
いや待て。そんなことよりこのままでは、ワイの目から見ても魔法使いとしては強力なフェルンの攻撃で、ワイの未来の嫁が怪我をしてしまうッ?! -
15
幸い、リュグナーがリーニエちゃんに「やめろ」と阻止する。結果的にフェルンの殺気も、リーニエちゃんからそれた様子だ
どうもリュグナーのやつ、フェルンが使った攻撃魔法に興味を抱いたらしい。緊張下での質疑応答が始まったのだ
だが先手で有利な戦況を得たフェルンが、長々つきあうはずもない。あんのじょう早々に会話を打ち切り、杖を構える -
16
「…? 時間稼ぎのつもりですね。早く止めを…」
そうやで有能フェルン、敵に回復の猶予を与えるのは愚の骨頂
何よりリュグナーとか言うその魔族は、ワイのリーニエちゃんゲット作戦における(現時点で)最大の障壁なんや。さっさと、やっておしまい
と、思いきや。またしてもリーニエちゃんが、健気にも無能キザ上司をかばうべくフェルンの前に、立ちふさがったのだ
「させない」 -
17
見ればリーニエちゃんの可愛らしい右のお手々から、バチバチと爆ぜる音を響かせて光球が出現する
放電現象だろうか? リーニエちゃんのピンクなツインテールが、風もないのにふわりと浮かんだ
だが、杖をかまえたフェルンの前に立ちはだかるなど、なんたる無謀! この勝負、あきらかにフェルンが優勢や
このままでは生ける宝石リーニエちゃんが、がらくたよりも無価値なキザ上司の身代わりで、無駄にせっかちな怒りんぼ女の魔手にかけられてしまう! -
18
リーニエちゃんのピンチを思うと矢も楯もたまらず、ワイは衰弱してぐったりしているグラナト伯に駆け寄り、彼を担いで割れたガラス戸の縁に向かっていた
できればフェルンがリュグナーに止めを刺している隙にリーニエちゃんを縛り上げ、そのままパーティ解消がてら愛の逃避行に移るのがワイにとってのベスト展開だったがさすがに物事、そう上手くは進まない
今は、フェルンのリーニエちゃんへの粗暴な攻撃を中止させるのが、先決や! -
19
「フェルン、伯爵の怪我が酷い。やり合う時間はねぇぜ。退くぞ」
我ながら、うまい口実が手に入った。果たしてフェルン、めずらしく素直に「はい」と頷く
かくしてひとまずワイは、後ろ髪を引かれる思いで伯爵の屋敷から脱したのである
一つだけ心配だったのはリーニエちゃんが無理を押して単身追撃(=フェルンの返り討ちに遭う)することだったが、彼女は彼女で深手の上司を置いてきぼりには出来なかったのだろう、杞憂に終わった -
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そんなわけでひとまずワイとフェルン、そしてグラナト伯は、町の教会に逃げ込んだ…
さっそく医療魔法を使える神父に、リュグナーの拷問で負傷していた伯爵および、ワイの治療を依頼する
教会そのものも微弱とはいえ、対魔族の結界に守られている。ひとまず伯爵は無事だろう -
本日はここまでです。明日もハプニングが無ければ22〜24時くらいに投稿します
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予告通り、「奥様は美少女まぞく」の続きを投稿します。2回目は21レスです
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21
さいわいグラナト伯は賢明な人物で、今回の救助に礼を言ってくれたのはもちろん、(今は脱獄中だが)彼が拘束したワイらの連れフリーレンの無罪放免も確約した
脱獄したとはいえフリーレンが、牢番殺しの下手人でないことをとっくに察していたのである。後知恵だがフリーレン、逃げる必要はなかったわけや
(そういえばリュグナーのやつ、ワイに向かって「人も魔族も若い奴は短慮」とか毒づいていたな…) -
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推測するに…フリーレンに返り討ちされた牢番殺しの真犯人・ドラートとかいう若手魔族は、上司リュグナーの許可も得ず暴走していたのだろう
ともあれ和平の使節リュグナーが、しょせんは伯爵領の防護結界を内側から解除させるためのペテンだったことが露見した今。リュグナーを殺そうとしたフリーレンの罪が撤回されるのも、当然ではある -
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しかもグラナト伯、彼が拘束したエルフ魔法使いの名が「フリーレン」だと知るなり、少なからず恐縮・後悔の色を見せたのである
なんでも、彼の祖父の代における魔王軍襲来を撃退してくれた、恩人エルフなのだそうだ。リーニエちゃんのことは措くとして、これはワイらに有利な展開や
加えて祖父の代に伯爵領を襲ったのも、今回の相手と同じ「七崩賢・断頭台のアウラ」なのだそうな。この事実に、ワイはふと気が付いた -
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(そう言えば収監直後に面会したとき、フリーレンも言うとったな。アウラは『私たちとの戦いで配下のほとんどを失って消息不明のはずだ…』と。
つまりフリーレンがアウラを撃退した戦場って、まさしくここ。この町だったというわけや)
…って、なんだよ。いくら世代交代していたとはいえ。最初からフリーレンは、伯爵領の英雄だったんやんけ! -
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たしかにアウラが復活してから数えてすら、かれこれ28年…
ましてフリーレンのパーティがアウラを撃退した時に至っては、伯爵によれば80年前のことだそうやからなるほど、フリーレンを面通しできる古老が居るかどうかすら、かなり怪しい
とはいえ彼女がダメもとで自分の素性をグラナト伯に自己申告していたら、状況とか展開とかがよりいい方向に変わっていたかもと思うと、モヤモヤする
エルフにこそ及ぶべくもないが人間かて百歳まで生きて記憶も鮮明な人間はまれに良くいるし、たとえおらんでも残された記録で照合できたかもしれん -
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逢った時から思っとったがなんかこう、フリーレンってコミュ障っちゅうか良い意味だけでなく悪い意味でも、飄々としすぎているんや。エルフってみんな、あんなもんなんか?
アウラ配下の和睦使節との鉢合わせという、最悪のタイミングだったにせよ。つくづく立ち回りが下手すぎるわ。やはりフリーレンとのパーティは、早めに抜けるのが吉かもな -
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それはともかく。再確認になるが偽りの使節リュグナーとすでにくたばったドラート、そして今やワイのターゲットにロックオンされている美少女(リーニエちゃん)の三人は、アウラの手下である
つまり…あの可愛い魔族っ娘を手中に収めるにあたっては、リュグナーはもちろんアウラという、さらに人外な障壁が立ちはだかってけつかるわけや
まったく、面倒くさいこっちゃで…いや待て、この状況でフリーレンは今、どこで何やっとるんや?
いっぽう、ワイの苦悩など知る由もない伯爵からのさらなる情報提供は、じつに興味深いものだった -
28
すなわち…
七崩賢のアウラは、「服従の天秤」という魔法を十八番にしているということだ。それこそが「儂らが長年アウラに勝てなかった要因だ」
病室の寝台に腰掛けながら、グラナト伯はそうのたまうのだった
「奴が使うのは相手を服従させ、意のままに操る魔法」
「七崩賢の魔法は人知も人の理も越える。アウラは天秤に自身と対象の魂を乗せ、魔力の大きさを秤にかける」
「魔力がより大きかった方が相手を屈服させ操り人形にできる。その体が朽ちて無くなるまで永遠にだ」 -
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「相手を服従させ、意のままに操る魔法」…そんなもんもあるんか
そんときワイに、電流走る。こいつは覚えておいて、損は無さそうや―――!
早速ワイは腕を振り回し、受けた傷の回復具合を確認する。神父の治療魔法の腕は確かだったと見え、早くも実戦に支障はない
「じゃあ伯爵はここで待ってろ」と、ワイ
「クソガキ、お前 何をするつもりだ」と、伯爵。ここ一番、ワイははったりをかます
「こんなところで隠れていたら魔族が帰ってくれるのか?」 -
30
フェルンが妙に心配そうな顔をする
「ワイ様、本気ですか?」
(ああ本気やで、まだ具体的な策は固まっとらんが『魔族の美少女を、ワイの女にする』極秘作戦の決行や)
だが、まじめっ娘のフェルンは臆病者で通っているワイの(エロ方向での)やる気を、ただのイレギュラーな戦意と解釈したようや。無謀を諫める口調となる
「あのときは不意打ちが偶然成功しただけです。現に止めを刺せるほどの隙はありませんでした」
「もしあのまま戦っていたら殺されていたのは私たちの方です」 -
31
ふーむ。ワイの目にはフェルンの実力は、側近の美少女はおろかリュグナー自身をも圧倒していたように見えたのだが。本人の自己評価は、そんなもんか
さっきワイの撤退宣言に意外と素直に従ったのも、あのまま戦う自信が無かったっちゅうことやな…
だが岡目八目。ワイはすでに、魔法使いフェルンの実力をもうちょっと高く買う気になっている。フェルンは間違いなく、リュグナーと互角以上や
こっちはそれも勘定に入れて、動く気になっているんや。なによりあの魔族の美少女を、無傷で生け捕りにすること…
これはワイにとって、愛のエロス戦士としての人生を賭けた大勝負なんや! -
32
普段ならフェルンの弱気にのっかって、おとなしく閉じこもっていたであろうワイ…
だがこの時のワイは絶世の美少女が、ただの敵魔族としてフリーレンの手にかかり、雑に退治されるのが怖かったのだ
ワイの推理に狂いが無ければ「魔族ぜったい殺すマン」のフリーレンが、安全圏で我関せずを通すはずはない―――
使節の体で町に入ってきたリュグナーを目にするなり見敵必殺モードになった彼女の、魔族に向けていた非情なまなざしが、それを確信させるんや
すでにフリーレンは、アウラ配下のドラートを始末している。乗り掛かった舟であり、80年ぶりの因縁の再対決はとっくにゴングが鳴っとる -
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つまり…いまごろ町の外ではリュグナーの吉報を待っているであろうアウラと、昔アウラを討ち取り損ねたフリーレンの決着をつける死闘が、始まっているはず
そしてその勝負は十中八九、あのクソばばあエルフの勝利やろう。フリーレンにとってアウラはすでに一度勝っている相手やが、アウラにとってフリーレン再来は想定外や
アウラは作戦を組み立て直す余裕も無く、己の手の内を知悉している敵と戦うことになる。歴戦の魔法使いフリーレン圧勝の方程式は、すでに仕上がっとる…
奇妙なことやがリーニエちゃんを敵ではなく、絶対欲しい破格のかわいこちゃんと認知した直後からワイの中の怯懦が消え、戦士の勘が正常に作動し始めていた -
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それゆえだろう。脱獄したフリーレンが偶然出会ったワイらに放った言葉が、いまでは実感をもって脳裏によみがえる
―――それに私は二人が魔族達より弱いなんて微塵も思っていないよ―――
現に目の当たりにした、フェルンの放った攻撃魔法。今やワイは確信している。ワイはともかく愛弟子フェルンへの、絶大な信頼あってのあの発言だったんや!
おそらく今回の戦いはフリーレンがアウラに、フェルンがリュグナーに余裕で勝つ流れやろう
ワイはその間、うまく逃げ回り隠れているとして…そこまで考えて、実はワイの胸の奥に新たな危惧が生まれていたんや
(アカン、これはわりと拙い流れや…ワイの未来の嫁に、死亡フラグが数え役満で立ちまくっとる!) -
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将官格アウラと士官格リュグナーが倒されて孤立無援のまま涙目で立ちすくむ、可哀想な下士官・兵卒格のリーニエちゃん…
涙無くして連想できない痛々しい未来像が、はっきり脳裏に浮かんだんや
彼女を追いつめた魔族アレルギーのクソばばあエルフと、その弟子の面倒くさい食いしんぼ女が、同時に叫ぶ
「「ゾルトラーク!」」
「あ…」
辛うじて儚げに声を絞り出すリーニエちゃんの半身が、無残にも吹き飛ばされる。綺麗なピンクのツインテールが半身ごと切断され、思わず月に向けて伸ばしたきれいな手も瞬時にチリとなる…
…そのヴィジョンが見えた時。それが自分の想像だと承知の上でワイは心中、叫んでいたんや -
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(やめてくれぇ! そんな綺麗な魔族の娘を凶器で殺す奴は、人の皮被ったケダモノやでぇえ!
魔族だろうが人間だろうがエルフだろうが、可愛い女の子は守られ愛されてなんぼや!
それをリュグナーの手下と言うだけでグラナト伯やフリーレンが殺すというのなら、愛のため美のために、誰かが彼女を守るべきなんやっ!)
その焦りゆえだろう。ワイは極秘の覚悟を迂闊にも、声に出していたのだ
「これは誰かがやらなきゃいけないことだろ?」 -
37
「…そうですね」と、すかさずフェルン
「では、一緒に頑張りましょう」
ふう、危なかった。うっかり本心を漏らしていたとはいえ。どうとでも取れる言い方だったので、フェルンも怪しむ風でなく普通の意味に受け取ったわ
ゆえに本来なら断る理由のない、フェルンの申し出やが。ここは我が身の危険も顧みずに拒否一択や…
「いや、フェルンは衛兵の詰め所に行け。町の人を避難させるんだ」 -
38
まだはっきりした計画が、出来ているわけではないものの。リーニエちゃんへの下心があるいじょう、敢えてフェルンやフリーレンとの共闘は避けねばならん
あくまで別行動(=ワイの独自行動)を主張したのは、それが本音やった
リュグナーに狙われとるっぽいフェルンとはわざと距離をとり、できれば彼女がリュグナーと対決する状況になるよう仕向ける…
つまり。ワイの恋路の邪魔者(味方側)に邪魔者(敵側)をぶつけて、まずは敵側を始末する寸法や
邪魔者どもが相手をつぶすのに専念しとる隙に、ワイのほうはフリーレンに加勢歎願におもむく…
…と見せかけて、こっそりリーニエちゃんの居場所を把握し、背後を取る。彼女の身柄を確保して、戦線離脱。そのままフリーレンのパーティを抜けて、愛の逃避行に移る
もちろん、流動的な戦場でこっちの狙いどおり運ぶかどうか分からんが、ワイの基本戦略はそれや -
39
果たして怪訝そうなフェルン。「ではワイ様は?」
「ああ」
ワイは決意をみなぎらせた強い視線をフェルンに投げかけつつ、宣言した
「俺は全力で土下座して、フリーレンを連れ戻してくる」
「…え?」
拍子抜けしたフェルンの表情。だが彼女のワイに対する失望の反応には、慣れている。言い換えれば、容易に信じてくれるやろう
「なんだよ!! もう倒してもらうしかねえだろ!!」
まぁ嘘なんやけどね。ワイの予想が正しければ、彼女は彼女でアウラを成敗すべく修羅場の真っ最中のはず。ノコノコ赴けば巻き込まれての死亡フラグ、てんこもりやで -
40
「確かにそのほうが現実的ですね」
不本意そうにではあったが、フェルンもうなずく。嘘も方便、これで分離行動を自然体で取れる。この先どう動くかは、動きながら考えるしかないが…
そんなこんなでグラナト伯を教会に残し、フェルンと連れだって町の外郭城壁まで移動したワイ
別行動へと移るにあたり、伯爵から預かっておいたグラナト家の紋章付きネックレスを、彼女に手渡す -
41
「こいつを見せれば衛兵は言うことを聞いてくれるってよ」
「わかりました」
「俺はすぐ町を出る」
だがその時。フェルンが妙に不審げな顔で、まじまじとワイを見つめてくるのである
(ヤバい。珍しくアクティブなワイを見て、背信を疑ったのか…?)
一瞬ビビったワイだったが、彼女が見つめているのは包帯を巻いたワイの両腕だった。どうやら別の案件らしい -
本日はここまでです。明日もハプニングが無ければ22〜24時くらいに投稿します
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予告通り、「奥様は美少女まぞく」の続きを投稿します。3回目は19スです
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42
「どうした?」
「腕、酷い状態ですね。そんな姿で城門を通れるんですか?」
確かにワイの腕は、リュグナーの攻撃を受けて負傷したものの。すでに神父の医療魔法で止血ばかりか機能も回復しとる
汚れた包帯を交換していないだけや
やれやれ、心配症な女やで。「大丈夫だろ。このくらい戦士なら普通だぜ。何か変なの?」
「両手血まみれで町中歩いてる戦士なんて見たことないですよ」と、フェルン -
43
ああ、もう。詮の無いことを。いまさら包帯を交換する余裕はない、勢いで乗り切るしか無いんや…
それに。見ればフェルンの外套の左裾だって、血で汚れているやないか
着ている本人には死角なうえ生地が黒いせいもあり、自分では気づいてないみたいやが
「第一、人のこと言えねえだろ。フェルンだって―――」
血痕のついた外套の裾を、つまみあげてフェルンに示しつつワイはふと、疑念を抱いた
フェルン自身は負傷していないし、返り血を浴びるような近接戦闘もしなかったはずやが…
「ん? これ誰の血だ? 俺の血じゃないよな」 -
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とたんにフェルンが顔色を変え、外套を脱ぎ捨てて城壁の外へ放り投げる
「おい!」
驚くワイに答えようともせず、フェルンは無言でワイに向き合い、じろじろと眺める
「どうしたんだ?」
おもむろに、ワイのジャケットの襟を裏返すフェルン。おんや? いつの間にか血で汚れとる…
「ワイ様。この血から魔力が…」
そういい終える暇もあらばこそ。ワイの背後から何か赤黒い塊が凄いスピードでワイを素通りし、フェルンの左肩下を貫いたのだ -
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見ればそれは、先刻ワイに手傷を負わせたリュグナーの、血を操る魔法。赤黒い爪が伸びてフェルンを城壁に張り付けにしていた
「…ぐっ!」
「フェルン!!」
急いで背負っていた斧を手にするワイの目の前に、飛ぶがごとく凄い跳躍をしながらでっかい得物を携えた人影が襲いかかる
咄嗟に自分の斧の柄で、受け止めるワイ
―――斧!?
戦斧で襲撃してきた相手は、ものすごい手練れ。衝撃で背中の城壁が吹き飛ばされるまま、ワイは敵とともに城壁外の地表に着地していた -
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目の前で、ワイとおそろいの巨大な戦斧をかまえる襲撃者―――それは見る者すべてを魅了する、さきほどの美少女(リーニエちゃん)やった
ゴスロリ衣装のかわいこちゃんが、凛々しく引き締まった表情でキリリとファイティング・ポーズをキメとるんや。なんたる素晴らしい眼福!
「信じられねぇぜ。俺は夢でも見てんのか(*´Д`)?」
うっとりしつつ、ワイは思わず(*´Д`)ハァハァしてしまう。夢なら覚めんな!
追い求めていたかわい子ちゃんが、まさか自分からワイに会いに来てくれるとは! まさに飛んで火に入る獲物ちゃん、感激やー -
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おっといけない。しょっぱなから鼻の下を伸ばしてニヤついていたら、彼女に「気持ち悪い変態…」と、あらぬ疑いをかけられてしまう
急いで戦場の前衛戦士にふさわしく真剣モードの表情を作り、両手で斧を構えるワイであった
それに可愛い姿にばかり夢中になって二の次になっていたが、一つだけ気になっていたことがあったので、声に出すのはそっちの方にした
「そいつは師匠の技だ」 -
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事情は分からんが、とりあえず師匠と同じ動きを披露するリーニエちゃん。せや、下心はひとまず置いて、様子見が先決やな
いくら可憐でも現時点で敵は敵、魔族は魔族や
いったいどんなからくりの攻撃を仕掛けてくるか、まずは見極めねばならん -
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最初はお互いに距離をとり、回り込むように円を描きつつ相手の出方を探り合うワイとリーニエちゃん…
刹那、彼女から仕掛けてくる。あのたおやかな細身からはあり得ない怪力で重量武器を軽々と振り上げつつ、韋駄天のような豪速の猛突進!
あっという間にワイは、弾き飛ばされていた。地面に大きな溝を作りつつ、大樹の幹に叩きつけられる
衝突の衝撃に耐えられなかった木の幹が、ワイの頭上の箇所で激しく音を立てて折れ、倒れた
さすが魔族や。常人にはありえぬ膂力…ワイは密かに舌を巻く。ともあれ、ひとまず得た情報を整理するため気を失ったふりをする -
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果たしてリーニエちゃん、完勝を確信したのか第二撃は放たず、ワイを遠目で眺めるだけや。まあ確かに、普通の人間なら即死もんやしな
同じ背格好の少女なら三十人力にはなろう圧倒的なパワーと、狩猟豹もかくやのスピード。加えて重量武具のもたらす衝撃力…
その乗数効果がもたらす破壊力は、修行を経た戦士ならぬ一般人がまともに食らえば原形をとどめえぬことは疑いない
一山いくらの雑兵相手なら敵が何十人いようが余裕で駆逐できるし、してきたのであろう。戦闘中、所作の全てに自信がみなぎっていた -
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(だがそれでは、魔物や魔族討伐の訓練をした戦士には通じんぞ…
怪力とはいえワイの師匠の技に比べればこの程度、まったく問題にならんレベルや)
ワイは自分でも驚くほど素早く、初撃で彼女の力量とその限界を読み切っていた
普段のワイなら、ビビリが災いして気が付くのにもっと時間がかかったろう。全ては(この娘を手に入れたい)という、恋の力のなせる業や
スピードと技術ではワイもかなわず捕捉に手こずるのは間違いないが、一つ一つの斬撃が弱い。鍛えぬいたワイの肉体に、致命傷は与えられない
(彼女、いずれ攻め手を欠いて疲弊するやろ。こっちも彼女の綺麗な体には傷一つ、つけることなく生け捕りにしたい。長期戦でいくぜ) -
52
「ドォォォン」
城壁の上で、轟音が響く。やれやれフェルンめ、やっと反撃に転じたか
怪我は負っているものの深手ではない。彼女ならリュグナーに、手堅く勝てるはずや
いっぽう我が愛しの対戦相手も当然、上方の異変に気づいて城壁を見上げている
「向こうも始まったか」
「しかし残念だな」と何気にドヤっとした口調で、尻もちついて幹にもたれとるワイに目を向けて言う。「こっちはもう終わりだ」
どうやらワイが動かんもんで、すっかり油断しきっとるようや
さらに「観戦でもするかな」と、独り言を続けるリーニエちゃん。「リュグナー様 邪魔すると怒るんだよね」 -
53
フーム。怒られるとは可哀想にこの娘、あのクソ上司からパワハラとはいわずともかなり威圧的に頤使されとるみたいやな…
まぁセクハラよりは、ましかも知れん。それに本人が居ない場でも「様」付けする辺り、彼女がリュグナーに(忌々しいが)上司部下という関係を超えて、敬愛を抱いておるのも窺える
いや待て、敬「愛」―――?
(それってまさか…まさかあの二人、ただの部下と上司やない、デキとるんとちゃうか?)
思えば、リュグナーの彼女への尊大さにもある種の馴れ馴れしさを感じる…?
ど、どちくしょうがぁぁああ! -
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あーいかんいかん、なんてダメなワイ。今はそんなことに気を揉んでいる時やないのにッ!
でも…でも気になるゥウウウ!!
「おや?」
ムクッと起き上がるワイを見て美少女魔族、意外そうな声を上げる
斧をかまえつつ「…まだ終わってねぇぜ…」と、ふらつきながら宣言するワイ。ただしダメージ受けとんのは、肉体よりも精神のほうなんやが
「しぶといね」
得物を構え直す、ワイの愛しのターゲット。「少しは楽しめそうだ」 -
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ワイはワイでそんな彼女の体技の美しさを楽しみつつも、疑惑の苦しみも抱えとった
そういえば、怪しむに足る要素はある。そもそもこの娘このルックスで、なんで物理攻撃に特化しとんのや?
それもよりによって、事実上リュグナーの野郎を護衛する肉体言語が専業の、用心棒ポジなん?
最初は凛々しくも可憐なその姿に見とれていたワイやが、リュグナーとの関係を邪推しだしてからは妙に腹立たしく見えてきた -
56
君、ふつうハニトラ要員やろ。自分の価値を知らんのか? その、童顔が映えるツインテールとゴスロリファッションこそが、君の最強の武器やろが!
それとも愛するダーリン(リュグナー)のため、奴の傍仕えに特化できる護衛スキルを磨いたっちゅう流れか(怒)? -
57
ワイが悶々としつつ、さすがに本人に問いただすこともできず防御に専念していたときである。城壁の上から、リュグナーの声が響いてきたんや
「リーニエ!! 何をやっている!! 早くそいつを片付けろ!!」
(そうか、この魔族のかわい子ちゃん、リーニエっていうんか。可憐さに似つかわしい、ええ名や)
…っちゅうわけで。これまで説明の都合上 はなっからリーニエ呼びしてきたが、ワイが彼女の本名を知ったのはこの時点からや
できれば直接、本人から教えてほしかったけどな! -
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しかしリーニエちゃん、これには少しイラっとした表情と口調になる
「なんだよ、我が儘だな。こいつ防戦一方でしつこいんだよ」
やはりワイの見立てどおり、フェルンがリュグナーを押しまくる展開やな。敵はもはや、部下の加勢を邪魔扱いどころか泣きつくハメになっとる
だがリーニエちゃんは怖い上官の窮地を案じている風でもなく、(リーニエちゃんを傷つけないため、わざと守勢一方の)ワイを倒すことに夢中や
といっても彼女の熱意からは、人間同士の真剣勝負にみられる高揚感は感じない。ひたすら、しぶとい不快害虫を駆除する作業にいら立っている風情やった -
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ならば。揺さぶりがてら、いろいろ聞いてみるんも手か
(決着付ける前に、君の…男遍歴―――というか君の異性関係について確かめさせてくれ。君とリュグナーは、ただの上司部下の関係なんか?)
いちばん聞きたいのは勿論この件だったが、声にする前に慌てて別の件に切り替える
「…その斧捌き どういうことだ…」
「そいつは師匠の技だ…」 -
60
ワイの声が動揺しているのを見て取ったリーニエちゃんは攻撃の手を緩めることなく、かつクールな無表情を装いつつも何気に得意そうに語り始める
「私は魔力を読み取るのが得意でさ
人が動いている時の魔力の流れを記憶して、動きを模倣できるんだよね」
「屋敷で初めてあなたの動きを見たときに確信した
私が昔記憶した、“最強の戦士”と同じ動きをしている」
「こんな偶然あるんだね。運命は面白い」 -
3回目はここまでです。続きはハプニングが無ければ、明日22〜24時くらいに投稿します
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はっけよいフェルン!
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予告通り、「奥様は美少女まぞく」の続きを投稿します。4回目は22レスです
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61
これにはリーニエちゃんの美しさに悶々としていた恋愛脳のワイも、息をのんだ
「…まさか…」
刹那。リーニエちゃんの斧の刃先が、遂にワイの間合いに入る。あかん。揺さぶるつもりがワイのほうが悶々しまくって、勝手に自爆しとった
「私は戦士アイゼンの動きを模倣している」
次の瞬間…リーニエちゃん渾身の斬撃をもろに貰って立ち続けられなくなったワイは、地面に倒れ伏せていた -
62
…なんや…無茶苦茶じゃねぇか…師匠が冒険の旅先でアウラとやりあったのって、80年前のことやろ
…こんなの勝てるはず…年下に見えてもリーニエちゃんは80年前に物心がついている
恐らく100才超のロリや。リュグナーとは、もはやワイが割り込む隙の無い古女房…
正直、リーニエちゃんの攻撃なんぞ見た目の出血はともかく大したダメージではなかったが、それより失恋の心理ダメージで、ワイは気力を失っていた
「ようやく倒れたか。急がないと、またリュグナー様に怒られる」
ああもう、またしてもリュグナー「様」か。ド畜生、ワイという一途な彼氏の筆頭候補がありながら…いや待て
…倒れた? ワイは倒れているのか… -
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そのときや。ワイの脳裏に、師匠アイゼンの顔が浮かんできたんは
修行中、師匠の重い技に耐え切れず仰向けに倒れたワイを、文字通り上から目線で説教する師匠の、うっとうしい三白眼…
「立て。ワイ」
「どんなにボロボロになっても倒れることだけは許さん」
…強い相手に勝つ方法を教えてやる…
…簡単だ。何度でも立ち上がって技を叩き込め…
…戦士ってのは最後まで立っていた奴が勝つんだ…
そうや、その通りや… -
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強い恋敵リュグナーに勝つ方法…
簡単や。相手より長生きしてしまえばええんや! 後は憂いなく、リーニエちゃんを独占すればええ
なにしろ奴は間違いなく、フェルンが始末してくれるんや
一方ワイは、リーニエちゃんの斬撃をしのぎ切れる。なるほど技とスピードはワイを上回るがいかんせん、威力がワイに通じない。何度でも立ち上がれる
そして次にワイが立ち上がるとき…それがこの勝負でリーニエちゃんに、引導を渡すときや! -
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ワイの立ち上がる気配に感づいたリーニエちゃんが、ワイを振り返る。まさに見返り美人、やっぱ可愛いなあ。でもちょっとウンザリ気味の表情?
「大人しく寝てれば良かったのに。もう負けたんだから」
寝てれば良かった? 一瞬、ワイの命を気遣っているのかと嬉しくなったワイだが、まあこれは単に、ワイの頑丈さに攻めあぐねていたってこっちゃろう
ワイも今は心を鬼にして、心の底から辛いけど、愛しいリーニエちゃんを腕力でねじ伏せなくてはならん。ここからは、メスガキわからせフェーズや -
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「…俺はまだ立っている」
「…それに思い出したんだ。師匠の技は、もっと重かった…」
「やっぱりお前のはただの真似事だ…」
ワイの挑発に、果たしてリーニエちゃんもカチンときたようだ
「ならその真似事で引導を渡してあげよう」
「エアファーゼン(模倣する魔法)」
大斧をかまえつつ、狩りをするネコ科動物のように低くうずくまるリーニエちゃん
この構え…やはり彼女は、(非公認やが)ワイの姉弟子や。しっかし同じポーズでも、美少女がやると悩ましいなあ
あやうく対決中に見とれて鼻の下伸ばすところやったが、さすがにそこまでの余裕は、この時は持てんかったわ -
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ワイが敢えて斧を大きく振り上げると狙い通り、がら空きになった胴に吸い寄せられるようにリーニエちゃんがワイの間合いに入ってくる
わざと防御を捨て去ったワイの動きを、彼女が(血迷ったな)と即断したのも無理はない
「ドッ」
横なぎに斧の刃先が、ワイの脇腹を直撃する。ワイは渾身の力を腹筋に込める
果たして刃先はワイの腹の皮を切り血しぶきをあげたが、筋肉は裂けなかった。まして内臓は安泰じゃ -
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ただでさえ回し斬りは、重量武具の利点を活かしにくい力業。加えて小柄な少女ゆえ取り回しの都合上、柄を半ばほども短く持っている
ゆえに遠心力もじゅうぶん活用できない。即ちリーニエちゃんの腕力・体格では、彼女の弟弟子の脇腹を切り裂くには足りなかったのだ
「相打ち覚悟だったのにビビって損したぜ」
「やっぱり全然重たくねぇや」
「あ…」というリーニエちゃんの、悲鳴とも驚愕ともとれる微かな声と、ワイ渾身の斧が振り下ろされたのはほぼ同時やった
「閃天撃!!」 -
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最強戦士アイゼンの一番弟子ワイの袈裟懸け斬りは、魔力放出によるエネルギーの光柱を生成。天高く伸びていく。さらに樹海の中に、凄まじい轟音と爆風と土煙をまき散らした
城壁の上からは「リーニエ!!」と叫ぶリュグナーの悲痛な声が聞こえてくる。リーニエちゃんという命綱の援軍を失ったことへの苦悶なのか、愛する者を失った悲鳴かは知りようもないが
だがフェルンと対峙している最中にわき見をするなど、死亡フラグでしかない
「しまっ…」。焦るリュグナーの声すら、言い終える暇はなかった
「ゾルトラーク」
ひときわ輝く閃光。ワイの恋敵? リュグナーの最期を、ワイは確信した -
70
翌朝…ワイとフェルンの二人は伯爵と連れだって、郊外の戦場に出向いていた
無数の首なし鎧が、大地に散らばっとる。アウラの「不死の軍勢」の、最期の姿や
期待通りフリーレンが七崩賢の一角、断頭台のアウラを葬ったんや
フリーレンは、戦地に独り佇立している。さっそくフェルンが呼びかけた
「フリーレン様」
「遅かったね」と、フリーレン。このあたり、ベテランの余裕というも貫禄やな。ワイらの勝利を、見極めてくれていればこそのセリフや
「アウラを倒したんですね」と、嬉しそうなフェルン
「信じられん。まさかこんなことが…」と驚愕の表情で原野の死屍累々を見渡すのは、グラナト伯である -
71
グラナト伯の姿を認めるなり、そそくさとワイらに出立を促すフリーレン
「行くよ」
グラナト伯は、あわてて「待て。逃げる必要は無い」と引き留める
「伯爵は全部不問にするってよ」。ワイがそう請け負うと、ようやくフリーレンも納得した表情を見せる
「激しい戦いであったろうにどれも大きな損傷は無い」
「感謝する。北側諸国の英傑達によく敬意を払ってくれた」
グラナト伯は、感無量の体や -
72
それからお互いの情報交換を行い、フリーレンはアウラを倒した顛末を、ワイらはリュグナーたちを打ち破ったいきさつを話した
果たしてフリーレン、ワイらが「見込み通り」の首尾だったことに、満足げに微笑む
「フェルン。ワイ。よくリュグナー達を倒した。偉いぞ」
「へへっ」。フリーレンに褒められて、ワイは曖昧に笑う。フリーレンはワイのことを「リーニエほどの別嬪でも、惜しみなく殺せる対魔族戦士」と、信じとるようだ -
73
だがフリーレン、さっそくワイの負傷とあちこち切られた着衣がよほど気になったのか、無遠慮にワイの手負いぶりをじろじろ眺める
心配しているというより、何か疑わし気に検分しているみたいな態度なのがちょいと鬱陶しい
あげく「ボロボロじゃなければもっと良かったけど。満身創痍じゃん」と、余計な一言
「このくらい戦士なら普通だぜ」とワイは強がるも、横でフェルンが「普通ってなんなんだろう」とつぶやく
いっぽうグラナト伯は、アウラとの戦いで戦死した息子の鎧を見つけ出していた。感極まった伯の声が、原野に響いた
「…フリーレン。儂は今日ほど誰かに感謝したことはない」 -
74
さて、長々と話してきたが、ある意味でここからが本題や
ワイは衛兵たちが遺体確認作業をしているのに混ざり、手伝っているフリをしながら“あるもの”を戦場跡から探していた…
あげく、首尾よく探し出してから仲間の目を盗んでこっそり懐に入れた。幸い、誰にも気づかれなかったようや
ワイが血眼になって探していたもの、それは…
(あった! これさえあれば、リーニエちゃんの身も心もワイのもんやっ) -
75
ワイが震える手で泥濘の中から拾い上げたもの。それは…
断頭台のアウラが、不死の軍勢を築き上げるために用いた彼女の切り札にして、フリーレンに敗れた元凶―――
「みつけたで、『服従の天秤』」
ワイは人目をはばかりながら、素早く天秤を外套の裏ポケットにしまいこむ。そしてさりげなく、場を離れようとする
「赤毛の戦士殿、どちらへ行かれるおつもりです?」
不意に背後から衛兵にそう呼ばれ、ワイはぎくりとした。ワイの頭髪が赤いので、そう呼んだのだろう。さっそくがめたのがバレたのか?
だが衛兵はワイを手招きしつつ、こういった。「伯爵様が、戦場の清掃はやらずともよいから、フリーレン様と共に屋敷に来るようお申し付けです」 -
76
その後、あらためてグラナト伯爵家の広間で伯の引見を受け、ぶじ褒美まで頂戴できたワイら一行…
フリーレンは偽物であるむね伯に念押しされても、伯家に代々伝わる大魔法使いフランメの魔導書を報酬として所望。手に入れて満足そうである
ともあれアウラ討伐の朗報に、町の住民も大歓喜
伯爵の屋敷を辞した後のワイらを待っていたのは、住民総出のおもてなしやった
フェルンは人々の賞賛とご馳走攻めに満更でもないようやったが、ワイは歓待を堪能するふりをしつつ、お祭り騒ぎが一段落する深夜を待っていた -
77
そして、お待ちかねの深夜―――日中のお祭り騒ぎと飽食で住民もフリーレンたちも寝静まり、町には打って変わった静寂が漂う
そんな中ひとり起床したワイは携行用のランプを手に、こっそりと寝室を抜け出す。目指すは、昨日の死闘の場だった城壁外の樹海や
崩れた石垣、無残に折れた樹木、えぐられた地面がそのまんまになっとる
昨夜、ワイが必殺の閃天撃を放った地点に到着する。ワイが故意に置いておいた倒木の束を取り去ると、そこには大穴があった
閃天撃の衝撃波が作った大きくて深い穴が、そのまんまになっとるわけや。「ゆうに人一人が隠れることができる」穴が…
おそらく明日か明後日にはこの辺りにも復興作業の調査隊がやってきて、この穴を見つけるはず。急がねば… -
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ワイはランプの光で、穴の中を照らし出す
「ふう、良かった。日中に逃げられちゃいないかと、冷や冷やしとったぜ」
ランプの灯火に浮かび上がるのは、目隠しされ手足を縛られ、猿ぐつわまで噛まされた哀れなゴスロリ娘…
そう。ワイの愛しの、リーニエちゃんだった -
79
果たしてワイの気配に気づいたリーニエちゃんが、もがき始める。せやけどワイの腕力に任せた緊縛は、今の彼女には解けまい
「うぐ…」
「スマンな待たせて。すぐ解放してあげるで。ただし―――」
ワイは穴の中に降り、リーニエちゃんの目隠しだけを外してあげる。ハイライトの無い可愛い瞳が、今は探るようにワイを見上げている
聞き手の諸賢はもうお気づきやろけど、ワイ必殺の閃天撃も、あたらリーニエちゃんを直撃する粗相はしなかった
もちろん峰打ちといえども衝撃波は強力で、リーニエちゃんを気絶させるのは容易いことや
彼女が負傷していないのをあらためた上で、縛って出来立ての穴の中へ…という寸法や -
80
それからワイはおもむろに、懐から「服従の天秤」を取り出す
「これが何かわかるな? リーニエ」
「ぐ!…っ」
瞳に、驚きの色が宿るのをワイは見逃さなかった
「あんたは魔力の読み取り…探知が得意らしいな。ならリュグナーとアウラの魔力が探知できないことには、もう気づいとるはずや…
お察しの通り、二人ともワイの連れに屠られた。かくして、アウラの天秤はいまやワイの手中にある、というわけや」 -
81
ワイは既に伯爵やフリーレンとの情報交換で、その天秤の使い方を知っていた。一呼吸おいて、呪文をとなえる
「アゼリューゼ」
リーニエちゃんの体から、どす黒いけど辺縁はピンク光を帯びた魂が、フワフワと飛び出してくる
いっぽうワイの体からも白く輝く熱い魂が、フワフワと浮かび出てくる。
二つの魂はワイが持つ天秤の左右の皿にそれぞれ乗り、重さを競い始める
最初の一瞬だけ、天秤は完全な均衡を保った。それから数秒の間があって、一瞬だがリーニエちゃんの魂を乗せた皿がググググ…とほんの数センチ、沈み込む
まさに、がんばリーニエや -
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だが軽量級だったがゆえに肉弾戦でワイに負けたリーニエちゃんと、勝者ワイ…その魂勝負も、結末は最初から見えていた
何よりワイのリーニエちゃんへの愛の重さは、リーニエちゃんの闇落ちを許してしまうほどやわやないッ!
「破ーっ!」とワイが叫ぶや否や。気合や、恋する男心の気合が勝ったんや!
天秤は一瞬にして逆転し、愛に生きるエロス戦士ワイの魂が怒涛の重量で沈みこみ、リーニエちゃんの魂が乗る天秤皿を押し上げていたのである
「勝った! リーニエ。今日からお前は戦士ワイの愛奴やっ、リュグナーや魔族のことは忘れてワイをワイ様と呼んで仕え、ワイの子を産み、ワイの嫁として女の人生を全うせえ!」 -
4回目はここまでです。続きはハプニングが無ければ、明日22〜24時くらいに投稿します
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予告通り、「奥様は美少女まぞく」の続きを投稿します。5回目は20レスです
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効果はてきめんやった
リーニエちゃんの目に、ハイライトが宿る。彼女がワイの愛の奴隷として、生涯そいとげる嫁としての運命を背負った、記念すべき瞬間や
ワイがおもむろに猿ぐつわを外し、リーニエちゃんのいましめをほどくと、リーニエちゃんがワイにひざまずき、胸に右手を当てて誓いを立てる
「ワイ様。わたくしの旦那様。リーニエはこれからワイ様の嫁としてワイ様におつかえし、ワイ様の赤ちゃんを産みます」
それからすぐに「産めたらの話ですが…」と付け加えたが、それはこの時点のワイには、まるで気にならん話やった -
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夢にまで見た光景に息をのみつつ、ワイは応じる。いくぶん、声は震えていたかもしれん
「…よくぞ言うてくれたリーニエ。ワイも君を全力で守る。君にはもう、痛い思いも怖い思いもひもじい思いもさせへんで」
それからワイはおもむろにリーニエちゃんの顔を両手で包み込み、熱い接吻をかわして抱擁し、彼女の温もりを味わった
彼女が無表情だったのは、まだ服従が表面的なものであるせいやろう。信頼を勝ち取るのは、今後のワイの努力次第か…
まずは用意しておいたフード付きの外套を、リーニエちゃんにかぶせてあげる。よし、これで余人に目撃されても角には気づかれない
「それじゃあワイについてくるんや。隠れ家を準備しておいたからな、案内したるで。もちろんフリーレンたちに探知されんよう、魔力制限は忘れんでな」 -
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リーニエちゃんを案内したのは戦場となった地点からほど近い場所にある、街はずれの古ぼけた貸家…
その家の鍵は今、ワイの懐中にある
抜け目のないワイは昼のうちに、ワイを歓迎してくれる住民の中からさりげなく、不動産業者のコネを得ておいたんや
(話が分かる上に口も堅そう)と見極めた相手を、ワイは宴会の席を外した廊下の隅っこに呼んでコッソリ、こう切り出した
「連れの女どもにばれんように、懇ろになった娘を連れ込める隠れ家を提供してくれへんか? 賄いつきの。もちろん、逗留中だけでええ
伯爵からは、ワイもたんまり報酬をいただいとる。損な商売はさせへんで」
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